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第1680話

 目を丸くして兄を見たら、兄はちょっと恥ずかしそうに言った。 「いやぁ……今までもちゃんと抑えてたつもりだったんだけどさ、よくよく考えたら割と強引なことしてたなぁって。お前と初めて抱き合った時と比べると、結構やり過ぎな展開も多かったよね」 「あー……まあ……」 「そういうの、私は『今日は強引な気分なんだな』と解釈して気に留めてなかったけど、メンテナンスしてもらったら頭の機能が弱ってるのが原因だってわかったんだ。記憶違いとかなんかやる気出ないとか、そういうのも全部魂が劣化していたのが原因だったみたい」 「そうなのか……? でも致命的な記憶違いをしてたわけじゃないし、やる気出ないと言っても鍛錬はそこそこしてただろ?」 「まあね。でもメンテナンス後に振り返ると、『やっぱり劣化してたんだな』って思えるというか。普段は気にならないけど、久しぶりに散髪して髪型をスッキリさせると『あ、やっぱり髪伸びてたんだな』って気付くことあるじゃない? そんな感じかなぁ」 「なるほど……」  アクセルにはよくわからないが、兄自身が「フレッシュになった」というならきっとそうなのだろう。  メンテナンスは成功しているみたいだし、ひとまずは安心してよさそうだ。 「なあ、兄上」  改めて、アクセルは兄に言った。 「もし俺が獣化したり、魂が劣化しているような症状が出てきたら、問答無用で施設に送り込んでくれよな」 「ふふ、そこは心配しないで。お前は私みたいな目には遭わせない。絶対だよ」  力強く肩を抱いてくれたので、少しホッとした。  その後は風呂を出て、新しい就寝着に着替えて眠った。自分のベッドはぐちゃぐちゃになっていたので、寝る前にシーツや枕等を全部洗濯カゴに突っ込み、その日は兄のベッドにお邪魔することになった。 「お前と添い寝するのもいいねぇ……。セックス後に半ば気絶同然で寝るのも好きだけど、こうやって平和に眠るのも幸せだな」 「ああ、そうだな……」  アクセルは生返事をしながら目を閉じた。自分が幼い時は、いつもこうして兄に抱き締められながら眠っていたな……。  そんな懐かしい気持ちに浸りながら眠ったら、夢すら見ずに熟睡してしまった。

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