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第1684話

「別にそんなこと思ってないけど」 「でも、こっちがお返しできるものは何もないからさ……。タダで使われているみたいで嫌だったら、俺の質問は全部無視しちゃっていいからな?」  そう言ったら、チェイニーに呆れた顔をされた。 「ほら、また変なこと気にしてる。そういうとこだよ、オレが心配してるのは」 「う……」 「オレは推しの役に立てて嬉しいし、タダで使われているなんて思ってないから。アクセルは余計なこと気にせず、死合いに勝つことだけを考えなよ。フレイン様と直接対決したいんでしょ?」 「あ、ああ……」 「だったら、余計なこと考えてる暇なんてないじゃん。アクセルはただでさえお人好しで、変なところに引っ掛かっちゃうんだからさ。気を付けた方がいいよ、そういうの」 「はい、すみません……」  思いっきり叱られてしまい、肩を落として少し反省した。  ――余計なこと考えすぎ……っていうのは、確かにそうなんだよな。今更この性格が治るとも思えないが……。  きっと、暇だから余計なことを考えてしまうのだ。ならばそんなことを考える暇もないくらい、鍛錬に勤しめばいい。ナダルとやらの戦い方と武器を確認したら、あとは死合いまでみっちりトレーニングしよう。 「わかった、ありがとうチェイニー。次の死合いも勝てるように頑張るよ」 「うん、応援してるよ。アクセルが負けると、こっちの賭け金がパーになっちゃうんでね」 「……賭け金?」 「あれ、知らないの? 死合いって一部の戦士の間では賭け事の対象になってて、どっちが勝つか張るのが定番のギャンブルなんだぜ?」 「ええ? そんなことしてたのか?」 「そりゃあ、娯楽になりそうなことなら何でもやるっしょ。ヴァルハラはただでさえ死合い以外の娯楽が少ないんだから」 「そ、そうか……」 「ま、賭け事なんて真面目なアクセルには縁がないだろうけどさ。んじゃ、死合い頑張って」  そう言ってチェイニーは、ベランダから立ち去って行った。

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