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第1686話
その彼が、従業員と思しき男性に見送られている。
「またいらしてくださいね、ナダル様。今度はリクエストに応えられるよう準備しておきますから」
「ああ、気が向いたらな」
そっけなく言って、ナダルは従業員に背を向けた。
――なるほど、彼がナダルさんか……。ある意味、噂通りって感じだな……。
多分彼は、今まで娼館で遊んでいたのだと思う。
どんな遊びをしていたかはあまり考えたくないが……まあ、大人の遊びであることは間違いないだろう。娼館というくらいだし。
あとは彼をこっそり追って、使用武器や戦い方を観察すればいいだけだな……と考えていると、
「あ?」
ナダルと目がバチッと合ってしまった。慌てて目を逸らしたが、つかつかとこちらに寄って来られて舐めるように全身を見られてしまう。
「おい、あんたアクセルだろ」
「は……ええ、そうですが……」
「やっぱりな! 噂通りのイケメンじゃねぇか」
「は、はあ……どうも……」
曖昧に微笑む。噂通りのイケメンって、巷では一体どういう噂になっているのだろう。というか、ナダルに言われても全く嬉しくないのだが。
――何だろうな……この人にはあまり関わっちゃいけない気がする……。
上手く言えないが、近くにいるとどうも肌がザワッとするのだ。相手が強いとか圧倒されるとかそういうのとはまた違って、もっと嫌な意味での危機感を覚える。
というか、危機意識の薄い自分でさえそう感じるのだから、ナダルには近づかない方がいいに違いない。使用武器や戦い方の調査なんて後回しでいいから、今はとにかく彼と距離を置くことが大事だ。
そう思ってその場から離れようとしたのだが、ナダルはしつこく絡んできた。
「で、あんた何しにここに来たんだ? 溜まってたのか?」
「い、いえ……間違って通りかかっちゃっただけです。深い意味はありません」
「そうなのか? まあでも、せっかく来たならちょっと遊んで行こうぜ? オレも付き合ってやるからよ」
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