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第1687話

「えっ!? いや、大丈夫です……! 俺、そういうのは間に合ってるんで……!」 「なんだ、フレインとイチャイチャしてるのか? 実の弟に手を出すとか、あいつも物好きだな」 「……! 兄のこと知ってるんですか?」  兄の名前に反応したら、ナダルはニヤリと口角を上げた。 「ああ、よーく知ってるぜ? 教えてやるから中で話そうや。こんなところで立ち話も何だしな」 「……。ええと……」  中で……っていうのは、もちろん「娼館で」って意味だよな? 実際に入ったことはないけど、中ではあんなことやこんなことが行われてるんだよな……?  ますます嫌な予感がしてきたが、ここで「結構です」と話を切り上げるのも、それはそれで気になってしまう。  兄のことは知りたい。でもナダルには関わりたくない。  とはいえ、ナダルからでないと兄の話は直接聞き出せないし、他に知りたいこと――彼の武器や戦い方くらいはリサーチしておきたい。  どうしよう、どうしよう……。  ――いや待て待て……! 余計な情報は入れない方がって、チェイニーにも釘を刺されたじゃないか……。ここはもう、ナダルさんの強さがわかればいいんじゃないか……?  改めてナダルの全身を眺める。  タトゥーにドレッドヘアーという特徴的な顔つきだが、身体の方はごく普通の中肉中背である。ランゴバルトほど体格がいいわけでもなければ、ミューほど小さいわけでもない。  身長もアクセルとそう変わらないし、特別筋肉質にも見えなかった。  武器らしい武器は所持していなかったが、振るうとしたら一般的な剣か槍といったところだろう。ユーベルのような特殊な武器で踊るといった感じでもなさそうだ。  だとすると、特筆して注意すべき点はないかもしれない。いつも通り自分の力をぶつければ、死合いには勝てるはずだ……多分。  アクセルはきっぱり首を横に振り、ハッキリと断りを入れた。 「いえ、結構です。俺は娼館には用はないので。それでは、失礼します」

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