1687 / 2296
第1687話
「えっ!? いや、大丈夫です……! 俺、そういうのは間に合ってるんで……!」
「なんだ、フレインとイチャイチャしてるのか? 実の弟に手を出すとか、あいつも物好きだな」
「……! 兄のこと知ってるんですか?」
兄の名前に反応したら、ナダルはニヤリと口角を上げた。
「ああ、よーく知ってるぜ? 教えてやるから中で話そうや。こんなところで立ち話も何だしな」
「……。ええと……」
中で……っていうのは、もちろん「娼館で」って意味だよな? 実際に入ったことはないけど、中ではあんなことやこんなことが行われてるんだよな……?
ますます嫌な予感がしてきたが、ここで「結構です」と話を切り上げるのも、それはそれで気になってしまう。
兄のことは知りたい。でもナダルには関わりたくない。
とはいえ、ナダルからでないと兄の話は直接聞き出せないし、他に知りたいこと――彼の武器や戦い方くらいはリサーチしておきたい。
どうしよう、どうしよう……。
――いや待て待て……! 余計な情報は入れない方がって、チェイニーにも釘を刺されたじゃないか……。ここはもう、ナダルさんの強さがわかればいいんじゃないか……?
改めてナダルの全身を眺める。
タトゥーにドレッドヘアーという特徴的な顔つきだが、身体の方はごく普通の中肉中背である。ランゴバルトほど体格がいいわけでもなければ、ミューほど小さいわけでもない。
身長もアクセルとそう変わらないし、特別筋肉質にも見えなかった。
武器らしい武器は所持していなかったが、振るうとしたら一般的な剣か槍といったところだろう。ユーベルのような特殊な武器で踊るといった感じでもなさそうだ。
だとすると、特筆して注意すべき点はないかもしれない。いつも通り自分の力をぶつければ、死合いには勝てるはずだ……多分。
アクセルはきっぱり首を横に振り、ハッキリと断りを入れた。
「いえ、結構です。俺は娼館には用はないので。それでは、失礼します」
ともだちにシェアしよう!

