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第1690話
「な……」
「もちろん今はランクが高いからそういうことはなくなったけどね。お前も、今じゃ立派な上位ランカーだから、滅多なギャンブルは仕掛けられないと思う。でも怪しいヤツだから、注意はした方がいいよ。ついでに死合いでボコボコにしてきてくれると嬉しいな」
そう言われて、アクセルはぐっ……と拳を固めた。
――ボコボコ? その程度じゃ生温いだろ……。
昔の話とはいえ、大事な兄を傷つけたのだ。誰であろうと絶対に許せない。例え兄が許していても、アクセルは永遠に許さない。
「わかった、俺に任せておけ。兄上の代わりに、ナダルを再起不能になるまでボコしてきてやる」
「はは、頼もしいね。楽しみにしているよ」
昼食をとった後、アクセルは早速ケイジの修行場に足を運んだ。まずは麓の基本的な修行場からだ。
――よし、誰もいないな。
近くに転がっていた丸太を担ぎつつ、周囲を見渡す。
ケイジの修行場は普通の戦士にはキツすぎるせいか、ほとんど誰も寄り付かない。今日もほぼ貸し切り状態だった。これなら人目を気にせず、鍛錬に集中できる。
――兄上の恨みは俺が晴らす……! 待ってろよ……!
燃え滾る気持ちを抱えたまま、アクセルはざぶざぶと冷たい川に入った。そして滝の下で丸太を持ち上げ、冷水に打たれた。
「ふー……」
最初は全身の感覚がなくなるくらい辛かったけど、次第に慣れて余裕がでてきた。
以前は少し打たれただけで気を失っていたのに、今じゃ平気で丸太を抱えていられる。こういうのも何だけど、それなりに強くなったものだ。兄にはまだまだ及ばないが、この調子で鍛錬を続けて行けばトーナメント優勝も夢じゃないかもしれない。
「む? これは珍しい、先客がいたか」
「あ、ケイジ様……」
そこへ、修行場の主・ケイジが通りかかった。
彼自身は麓の修行場を使うつもりはなかったようで、そのまま更に山奥の修行場に進む予定だったみたいだ。
そんなケイジが、こちらに目線を向けてくる。
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