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第1695話
「アクセル……!」
兄がこちらに駆け寄り、優しく身体を抱き起こしてくれる。霞んだ目で前を見たら、視界に兄の心配そうな顔が映った。また兄に心配をかけてしまったな……と反省するのと同時に、妙な安心感が襲ってくる。
兄がアクセルの額に手を当てて、言う。
「ああ、やっぱり熱が出てる。なんか危ないなって思ったんだ……。弱っているところを狙うなんて、ホントにあの連中は……」
「…………」
「ひとまず、お前はゆっくり休みなさい。後は私が全部何とかしておくからね」
兄はひょいとアクセルを横抱きにし、早足で家に戻った。
そしてベッドにこちらを寝かせると、急いで寝室を出て行った。
「う……ん」
少し安静にしたところで、ようやく意識がハッキリしてきた。
殴られた後頭部はまだ痛むが、動けないほどではない。熱も多少あるみたいだけど、うなされるほどの高熱ではないし……早く兄に「心配いらない」と伝えなくては。
そう思ってふらふらとキッチンに向かったら、一人用の鍋を煮込んでいた兄がぎょっと目を剥いてきた。
「ちょ、おま……何で起き上がってるのさ? ちゃんと寝てないとダメじゃないか」
「そんな、寝込むほどのことじゃないから……。もう意識も戻ってきたし心配いらないよ」
「ダメダメ。お前はそうやっていつも無理して倒れちゃうんだから。休む時はしっかり休まないと、肝心な時に動けなくなっちゃうよ」
「でもホントにたいしたことないん……」
「お黙り。仮にお前がよくても、私の方が心配で見ていられなくなっちゃうんだよ。私のためだと思って今日は休みなさい。おかゆ持って行ってあげるから」
「え……うーん……」
それでもまだ納得できないでいると、兄は語気を弱めてこんなことを言い出した。
「……これ以上私を弱らせないで。ただでさえ、お前を一人で買い物に行かせたのは失敗だったと後悔してるんだ。お前の体調不良に気付けなかったのも悔しいし、あんな連中につけ入る隙を与えたのもお兄ちゃん失格だ」
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