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第1696話
「そんなことは……。さっきのは俺が勝手にやられただけだから、兄上がそこまで責任を感じることはないと思うぞ……」
そうフォローしたけれど、兄は頑なに首を振った。
「私はね、お前が生まれた時に『この子はずっと私が守る』って決めたんだ。だからお前に何かあったら、それは私の責任なの。少なくとも私はそう思っている」
「兄上……」
「……やっぱり、ヴァルハラにいると心のどこかで危機感が薄れてしまうのかな。例え何かあっても、遺体さえ回収できれば元通りになるからって……まあ大丈夫だろうって、油断しちゃうのかもしれない。本当によくないね、こういうの」
「…………」
「私も、もっと危機感を持って生活しないとダメだな。こんなに油断してたら、いつか取り返しのつかないことになってしまう」
「そんなことは……」
「さ、お前はもう休みなさい。これできたら持って行ってあげるからね」
「……はい」
結局何も言えず、アクセルは静かにベッドに戻った。
薄めの掛け布団に潜り込み、じっと考えを巡らせる。
――過保護とか大袈裟とか……そういう問題じゃないんだろうな、兄上にとっては……。
自分が思っているより、兄はアクセルのことを大切に考えている。
だからこそ、変な連中につけ入る隙を与えたのが許せないし、自分さえ一緒について行けばこんなことには……と後悔してしまうのだろう。
もしこの立場が逆だったら、アクセルだって同じように後悔したと思う。
――でも、過ぎたことを悔やんでもしょうがないんだよな……。もちろん反省は大事だけど……。
時間を巻き戻すことはできないのだから、「次からはこんなことが起きないように」と気を付けるしかないのではないか。
というか、今回は体調不良に気付かず一人で買い出しに行ってしまったアクセルが一〇〇パーセント悪い。反省すべきなのは自分であって、兄は危ないところを助けてくれたのだから反省点なんてないと思うのだが……。
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