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第1698話(フレイン~アクセル視点)
――うーん、まだちょっと熱が残ってるかな……。
フレインは冷たい水で濡らしたタオルを固く絞り、それを弟の額に乗せてやった。
起きたら喉が渇くだろうと思ったので、ついでに飲み水も枕元に置いておいてあげた。
――ホント、いくつになっても世話が焼けるんだから……。
思わず苦笑が漏れてくる。
その場の勢いでケイジの修行場に行ったんだろうけど、あそこで鍛錬するからにはタオルや着替えなどの持ち物を用意しないとダメだ。びしょ濡れのまま帰ってきて、風邪をひくことになる。いくら強くなっても肝心なところで詰めが甘いから、何だかんだで心配になってしまう。
――ま……それもこれも、次の死合いで勝ちたいからなんだろうけどね……。
賭けに負けて一ヵ月娼館にいた……と言った途端、弟の目の色が変わった。ナダルに対して敵意剥き出しになり、「兄上の分までボコボコにしてやる!」と意気込んでいた。
それで風邪をひいて襲撃されていたら本末転倒だが、必死に鍛錬していた理由を思えばあまり強く注意はできない。
「……大丈夫。お前のことは私が必ず守ってあげる。だからお前は無理しない程度に、自分の道を突き進みなさい」
そう囁き、フレインは静かに寝室を出た。そしてリビングで愛用の太刀をチェックした。手入れは完璧である。
――さて……ゴミ掃除に行ってこようかな。
アクセルに気付かれないよう、音もなく家を出た。
そして夜道を歩いて娼館に向かうと、従業員に尋ねて先程弟を襲撃した人物を特定した。
***
「ん……」
翌朝、アクセルはいつもよりだいぶ遅く目を覚ました。起き上がった途端、パサ……と額から乾いたタオルが落ちた。
自分で額に手を当ててみたが、もうすっかり元通りに思える。やはり疲れからの微熱だったみたいだ。たいしたことなくてよかった。
――……って、今何時だ?
慌てて時間を確認したら、午前九時をとっくに過ぎていた。そんなに寝てしまったのかとさすがにビビった。
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