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第1699話

 急いでベッドを飛び出し、リビングに赴く。  そこにはラップをかけられた朝食が用意されており、書き置きも残っていた。 『ちょっと朝市に買い出し行ってくるね』  そう言えば、昨日は市場が閉まるギリギリで買い出しに行ったため、あまりいい物が買えなかった。それどころか、買った食材は襲われた際に地面に落としてしまったし。 「はぁ……」  深い溜息をつき、アクセルは席について朝食を片付けた。今後は、ああいうことがないよう気を付けないとなぁ……。  昨夜からほぼ何も食べていなかったので、あっという間に完食してしまった。  皿を洗い、昨日できなかった家事をこなしてしまおうとまずは洗濯カゴをチェックする。案の定、自分が着ていた服はびしょ濡れのまま中に埋もれていた。 「あれ……?」  カゴの中に、兄の片マントが突っ込んであるのを見つけた。  最初は単に「汚れたから洗濯に出したのかな」と思っていたが、ところどころ破れた跡があり、茶色に変色した血液も飛び散っていた。兄レベルになると返り血もあまり浴びないので、ここまで汚れているのは珍しい。  ――何をしたらこうなるんだ? これ、昨日の今日だよな……?  うっすらと嫌な予感が頭をよぎったので、アクセルはあえて何も考えないことにした。  ヴァルハラは戦闘に秀でた男ばかりの世界なのだから、時にはあからさまな汚れがつくこともあるだろう。  兄のことだから滅多なことでは負けないだろうし、余計な心配はしない方がいい。  さっさと洗濯してこよ……とカゴを抱えて玄関を出ようとした時、ちょうど兄が帰って来た。思った通り、抱えきれないほどの食材を買い込んでいた。 「お、おかえり……。相変わらずすごい量だな?」 「これくらい買っておかないとすぐなくなっちゃうからね。私たちだけじゃなく、ピピちゃんもいるからさ。毎日の野菜スープもバカにならないでしょ」 「まあな」 「で、お前はこれから洗濯かい? それなら私が行ってくるからお前は家にいていいよ」 「いや、もう熱は下がったから……」

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