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第1700話
「だーめ、治りかけで油断したらまたぶり返しちゃうよ。私はドラムに洗濯物突っ込んでくるから、お前は食材を中に運んでおいてくれる?」
「は、はい……」
「じゃ、行ってくるね。すぐ帰ってくるから♪」
食材をドサッと渡し、代わりに洗濯カゴを持って、再び兄は出掛けていった。足取りも軽く、どこか鼻歌を歌いそうな勢いだった。
――兄上、随分上機嫌だったな……。
台車に積まれた大量の食材も一緒に整理しながら、思う。
普段は細かいことを気にしないが、兄は一度やられたことは細部まできちんと覚えているタイプだ。いいことも悪いことも、何ならアクセルが忘れてしまった出来事さえも、頭ではしっかり記憶している。
だからおそらく昨日襲撃してきた男たちの顔も全部覚えていて、アクセルが寝ている間に粛清しに行ったのだろう。だからマントがあんなに汚れていたのだ。
やたらと上機嫌だったのも、連中を全部始末できたからに違いない。
――兄上……何もそこまでしなくていいのに……。
そういうことするから、いろんなところで恨みを買うんじゃないかな……とも思う。
大事な弟に手を出そうとした連中を許せないのはわかるけど、そこで反撃していたらずっと同じことの繰り返しになってしまうではないか。
そもそもアクセルが襲われがちなのは、兄・フレインが過去にやらかしたことへの報復……という側面もある気がする。フレインには直接手を出せないから、代わりにあいつの弟を……というわけだ。
だとするならば、兄がああいった苛烈な反撃をやめない限り、自分はこの先も永遠に襲われ続ける気がする。
兄はこちらを「お前は警戒心が薄い」だの「無防備すぎる」だのと言ってくるけど、それと同じくらい兄自身の行動も問題だ。何かある度にいちいち相手を皆殺しにしていては、余計に報復が激しくなるに決まっている。
――これは一度真剣に話し合わないとダメかもな。正直、話題にしにくいが……。
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