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第1702話
「…………」
「んじゃ、スープよろしくなー」
何事もなかったように庭から立ち去っていくアロイス。
とんでもないことを聞かされたショックで、アクセルはしばらくその場から動けなかった。頭も真っ白になってしばらくは何も考えられなかった。
「ぴー……」
ピピが心配そうに身体をすり寄せてくる。
それでようやく我に返ったが、引き攣った顔でピピを撫でるのが精一杯だった。
――兄上……どうしてそこまで……。
守ってくれたのはありがたいが、殺戮をして欲しいわけではない。報復も頼んでいないし、無関係の従業員を一緒に切り捨ててしまったことも悲しかった。
でも兄からすれば、
「大事な弟に手を出そうとしたヤツは粛清されて当然、溜まり場を貸し出している娼館の従業員も同罪」
……ということなのだろう。とはいえ、いくら何でもそれは過激すぎる。
襲ってきた連中だけピンポイントに粛清して、他の人たちは襲わない……という選択肢は取れなかったんだろうか。どうして一番やっちゃいけない方法をとってしまったんだろう。
そうやって無関係な人を葬る度に、あらぬ方向から無駄な怨恨を買っていると気付いてもよさそうなのに、どうして同じことを繰り返すんだろう……。
――いや、どうしてじゃないな……。俺が弱くて頼りないから、兄上はずっと……。
アクセルがもっとしっかりしていて、つけ入る隙がないくらい強ければ、兄はあんなことしないはずだ。
でもランクが上がってもアクセルは相変わらず危なっかしく、何かにつけてトラブルを呼び寄せて兄に助けてもらっている。
だから兄は先回りして、危なくなりそうな連中を片っ端から粛清してしまうのではないか。やりたくて刃傷沙汰を起こしているのではなく、可愛い弟を守るためにやむを得ず過激な方法をとっているのではないか。
だとしたら……俺が兄上を止める権利はないのかもしれない……。
「……っ……」
様々な感情がぐちゃぐちゃになって押し寄せてきて、気付いたらボロボロ泣いていた。
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