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第1704話

「で、お前はそれをやめろって言ってるの? なんで? どうせ復活できるんだから、問題ないじゃない」 「…………」 「ねえ、お前は何をそんなに悩んでいるの? また誰かに何か言われたの? お兄ちゃん、そんなおかしなことはしてないよ? お前のために安全を確保してきただけだよ?」  ああ、やっぱりな……と思った。  この兄は、肝心なことを何もわかっていない。「お前のために~」などと言っているが、回り回って弟の首を絞めていることに全く気付いていない。  兄の中では一〇〇パーセント善意の行動だから当然だけど……。  アクセルは呟くように言った。 「……それ、俺のためになってないから。そういう風に先回りして勝手なことされるの、普通に迷惑なんだ」 「え……」 「俺を直接襲撃してきた連中はともかく、娼館の従業員は何の関係もないじゃないか。そうやって無関係な連中を葬る度に、いらぬ怨恨を買ってるってわからないのか? 兄上がそういうことするから、回り回って俺が被害を受けるんだよ」 「え……いや、それは……」 「どうせそこまで考えてなかったんだろ。兄上はもうランキング三位の強者だから、直接襲われることはないもんな。でも俺は違う。兄上に復讐したい連中にとっては、俺は格好の獲物なんだよ。俺が変な連中に目をつけられるのは、兄上のやらかしが原因でもあるんだ」  そう言ったら、兄は顔を引き攣らせた。  アクセルは深々と溜息をついた。 「だからもう……そういうのは終わりにしよう。少なくとも、頼んでもいないことを先にやるのはやめてくれ。自分のことは自分で解決する。やられた分は死合いでやり返せばいいから……。兄上が影でそういうことをしているのは……もう、嫌なんだ」 「…………」  兄はしばらく何も言わなかった。言葉が出てこないのか、何を考えているのか、顔面蒼白になったままこちらを見つめている。  さすがにちょっと言い過ぎたかなと思っていると、ようやく視線を落とし、低い声で尋ねてきた。

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