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第1710話

 誰かに話したい。相談したい。  でも、自分で蒔いた種なのだから自分で何とかしなければ……という気持ちもある。  だいたい、相談するって言ったって何をどう話せばいいのか……。 「なあアクセルさ」  と、アロイスが腰に手を当てて言った。 「何を悩んでるか知らねぇけど、言いたいことあるならハッキリ言った方がいいぞ? 言わなきゃわからないことの方が多いし、ウダウダしてる時間ももったいないしな」 「……余計なことを言って後悔するパターンもあるんだよ」 「その時はその時で、『ごめん』って謝ればいいじゃん。長く生きてりゃ、余計な発言で喧嘩になることなんてたくさんあるしな。一度も喧嘩しない関係の方が珍しいと思うぜ?」 「そうなんだろうけど……今回のは喧嘩というより、俺が一方的に兄上を傷つけてしまったというか……。謝罪の言葉も届くかわからないんだよな……」  そう吐露したら、アロイスは軽い調子で笑い飛ばしてきた。 「それだって、言ってみないとわからねぇじゃん。何があったか知らないけど、お互い頭冷えたら『なんでこんなことで喧嘩してたんだろ』ってなるかもしれないぜ?」 「……だといいけどな……」  頭が冷えればいいが、兄の怒りっぷりからするとそれも難しい気がする。叩かれたり踏みつけられたりしたのは、さすがに初めてだったから……。 「てかさ、フレイン様と喧嘩したならタイマンして決着つければいいじゃん。何のためにヴァルハラにいると思ってるんだよ?」  と、アロイスが自然な口調で言う。 「オレたちは戦士なんだから、言葉でわかり合えない時は拳で決着をつける。で、負けた方が勝った方の言うことを聞く。単純だけど、それが一番シンプルな解決策だと思うぜ」 「それは……まあ、同レベルの戦士相手だったらいい方法かもしれないな……」  だが生憎、自分と兄では実力が違いすぎる。まともに決闘して兄に勝てるはずないし、いつものようにボコボコにされて終わりだ。  まあ、自分が悪いのだからボコボコにされるのもやむを得ないのだが……。

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