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第1711話
「なんだ、アクセル。未だに『俺は兄上より弱い』とか思ってんのか? そんなのやってみなきゃわかんねーじゃん」
などと、楽天的なことを言ってくるアロイス。
「ヴァルハラに来たばかりの頃ならともかく、今じゃアクセルも一〇〇位以内に入る強者だろ? トーナメントも順調に勝ち上がってるし。タイマンしても、ボッコボコにされて何もできない……なんてことはないと思うぜ?」
「そう、かな……。ある程度は兄上との距離も縮まったと思うが、それでもまだ差は大きいと思うぞ……?」
「だからそこは、やってみないとわからんだろ。何事もチャレンジだって」
「…………」
「何にせよ、そういうトラブルはさっさと解決してきた方がいいぜ? ウダウダ言ってても時間の無駄だし、気になることを抱えたままじゃ死合いに集中できないからな。せっかくトーナメント進めることになったんだから、次も勝たないと損じゃん」
「う、うん……」
そういや、兄にも似たようなこと言われたな……などと思い出す。
「んじゃ、また来るわ。スープ忘れずによろしくなー」
適当すぎるアドバイスを残し、アロイスはベランダから立ち去って行った。
仕方なくアクセルはアロイスから渡されたスープ鍋をキッチンに運び込み、スープの材料をキッチンに並べた。
――タイマンはともかく、早めにケリをつけた方がいいのは確かだな……。兄上とすれ違ったまま万が一のことがあったら……。
喧嘩別れしたまま二度と会えなくなった……なんて例は、意外と少なくない。
特に生前は常に戦場に立つ身だったから、勢いのまま口論してそのまま戦場に立ち、悔いを残したまま戦死した……ということも十分あり得る話だった。
だから喧嘩した時は、後悔しないようにその日のうちに仲直りする。できるだけ長引かせない。これが鉄則だった。
「…………」
スープを作りながら兄の帰りを待とうかと思ったが、どうしても我慢できなくなりアクセルは家を飛び出した。
陽の落ちかけた市街地を走り、とある家を目指した。
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