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第1712話(フレイン目線)

「……ということがあってねぇ」  と、フレインはグラスを揺らしながら語った。久々にヤギの蜜酒を飲んだが、いくら飲んでも酔える気がしない。今日はこれで五杯目なのに。  ぐでぇ……とテーブルに突っ伏し、嘆くように言う。 「はぁ……ちょっとやりすぎちゃったかなぁ……。なんか知らないけど、気付いた時には弟叩いてて、頭踏みつけて結構辛辣なこと言ってたんだよね」 「そうかよ」  ジークが興味なさそうに自分の髪を拭く。ちょうど夜のシャワーを終えたところで、やや迷惑そうなオーラが漂っていた。  フレインは気にせず、話を続けた。 「やっぱり、魂のメンテナンスをすると昔の過激な自分も戻ってくるのかなぁ? だとすると、これからの生活がちょっと不安だね」 「それがお前さんの本性なんだから仕方ないだろ。理性で抑えたところで、ふとした拍子に狂暴性が表に出る。それだけだ」 「ええ……? そうかなぁ。私、そこまで狂暴なつもりはなかったんだけど」 「いんや、お前さんは昔から狂暴だった。ちょっとでも気に入らないことがあると、容赦なく相手を斬ってたからな。今の方がマシなくらいだ」 「だって昔はホラ……やらなきゃやられるみたいな環境だったからさ。やられてから反撃してたんじゃ遅かったんだよ。わかるでしょ」 「……まあわかるけどな。だがそういうところを差し引いても、お前さんは俺たちの中でも相当過激な部類に入る。敵にも優しい弟くんとは、そもそも根本的に違うんだ」 「うん、まあ……。あの子、超がつくほどのお人好しだからね」  頬杖をつき、フレインはグラスを煽った。そして六杯目の蜜酒を自分で注ぐ。 「戦うことが性分の戦士なのに、無駄な殺しを嫌がるって珍しくない? 死合いは頑張ってるんだけど……アレかな、弟にとって死合いはスポーツみたいな認識で、それ以外の場外乱闘はただの殺戮だと思ってるのかな」 「かもな。とにかく、さっさと帰って仲直りしてこいよ。オレはもう休みたいんだ」

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