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第1718話

「水ならあるぞ。それともハチミツ入りレモン水にするか?」 「……どっちでもいいよ。とにかく今は水分をとりたいんだ」  言いつつ、作り置きのハチミツ入りレモン水までぐびぐび飲んでいる兄。  アクセルはその横で、追加のハチミツ入りレモン水を作った。透明な大ボトルに冷たい水を注ぎ、レモンをスライスしてその上に浮かべる。そしてヴァルハラのハチミツを適量入れ、混ぜて放っておけば完成だ。  作り置き用のレモンも少なくなってきたので、明日辺り追加のレモンも買ってこよう。 「なあ兄上……俺さ……」 「……ごめんね」 「えっ……?」  唐突に呟くような声が聞こえ、アクセルは顔を上げた。兄はそのままの姿勢で、半ば投げ出すように続けた。 「……ごめんね、こんなお兄ちゃんで。お前の理想の兄とは程遠くて」 「えっ!? あ、いや、そんなことないぞ……? 俺は今の兄上も尊敬してるし……」 「でも嫌なんでしょ、影で過激なことしてる私は」 「それは……」 「……止めたいのはやまやまなんだけどね。でも本能的にどうしようもないんだ。私は元々こういう性格だから、敵を斬るのに迷いがないんだよ。だから、そこに関してはもう諦めて欲しい」 「ああ、うん……それはもういいんだ。兄上は今のままでいい」  そう言ったら、兄は訝しげにこちらを見てきた。  アクセルは続けた。 「俺たち、毎回この手のすれ違いで喧嘩してるだろ? でもどちらかが悪いわけじゃないから、落としどころを見つけるのも難しい。それでいつもうやむやのまま、適当に仲直りしていつもの生活に戻って……それでまた、ふとした拍子に同じ内容で喧嘩してしまうんだ」 「…………」 「だからもう、お互いの主義主張にはあまり口出ししない方がいいのかなと。もちろん『やめて欲しい』と思うことはあるけど、別に兄上の考えや人生観を否定したいわけじゃない。これだけ長く生きてきたら、今更ガラッと変えるのは不可能だろうしな」 「……そうだね」

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