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第1719話
「だから俺、兄上のやることにはなるべく口を出さないようにするよ。兄上のことだから、過激なことをするのは何か深い考えがあってのことだろうし。さすがに獣化みたいに頭おかしいことになったら止めるけど、大抵の場合はそうじゃないからな」
「…………」
「だからこれからも、兄上は兄上の思うように行動してくれ。俺は何も言わないから」
そう言ったら兄は少し目を見開き、やや動揺したように呟いた。
「お前、それは……」
「あっ、別に兄上のこと見限ったとかじゃないからな? そこは勘違いしないでくれよ? ただ、これ以上同じようなことで喧嘩するのをやめたくて。不毛だし、後味も悪いし、着地点もないし……それに、今までの喧嘩っていつも俺が余計なことを詮索したり、兄上の気持ちを考えずに無神経なこと言っちゃったりするのが原因だしさ……」
「…………」
「兄上が何をしようと、俺の気持ちは変わらない。これからもずっと兄上のことが好きだし、兄上が拒否しない限りずっと側にいる。……俺が言いたいのは、それだけかな」
「……そうかい」
ここでようやく兄はグラスを置き、こちらに向き直った。
様々な感情が入り混じった複雑な表情をしていたが、どこか吹っ切れたようにも見えた。
「……まあ、いいや。お前は元々そういう子だもんね。素直で純粋で、超がつくほどのお人好しで、ヴァルハラに来ても人をあまり疑わない。私とはあまりに正反対すぎて、時々理解が追い付かなくなるよ」
「う……。なんかそうやって言われると、かなりアホの子のように聞こえるんだが……」
「でも、だからこそ愛されるんだよね。放っておけないというか、つい守ってあげたくなっちゃう。いつまでも頭お花畑なのはよろしくないけど、かといってすぐに人を疑うようになったらお前じゃないし。お前が純粋で綺麗なままでいてくれるから、私も必要以上に暴走せずに済むのかもしれないね……」
兄はしみじみと続けた。
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