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第1720話

「……それにお前、こういう時に嘘つかないし。いつも正直な気持ちを伝えてくれるから、本当に私のこと好きなんだなってわかる。私はそこそこ疑り深いから、お前の素直な言動は実にありがたいよ」 「いや……俺の場合、単に嘘をつくのが下手なだけな気が……。というか、自分の気持ちってちゃんと口に出さないと伝わらないだろ。以心伝心も素敵だけど、やっぱり大事なことは直接言いたいというか」 「それができる人って、意外と少ないと思うな。男なんて特に、そういうことを照れ臭がって上手く言えない人が多いから……」  そうかな……と首をかしげていると、兄はこちらに手を伸ばして頭頂部辺りを撫でてきた。  何かと思っていたら、こう話を続けてきた。 「頭踏みつけちゃったのもごめんね。気づいたら手だけじゃなく足まで出てて。キレたら見境なくなるところも、どうにかしたいんだけど……」 「あ、ああ……いや、それはいいんだ。兄上を怒らせるようなことをした俺が悪いんだからさ。もう気にしないでくれ」 「……うん……」 「そんなことより、俺次の死合い頑張るからな。兄上の代わりに、ナダルをボコボコにしてくるからしっかり応援しててくれよ?」  強引に話を終わらせ、アクセルは作っておいた猪のシチューを温め直した。そして硬めのバゲットをスライスし、シチューと一緒に盛りつけた。 「好きなだけ食べてくれ。食欲がなければ明日に回してもOKだ」  そう言って兄と一緒に食事をとった。  その間、兄は特に目立ったことは言わなかったが、何か別のことを考えているのか、時々上の空になっていた。 ***  数日後。何だかんだでナダルとの死合い当日がやってきた。  ――これでよし、と。  いつもより早めに起床し、いつもと同じ朝のトレーニングをした後、念入りに武器の様子を確認する。  ピピも応援するようにこちらに近づき、ふわふわの身体を擦り寄せてきた。 「ありがとう、ピピ。俺頑張ってくるからな」

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