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第1724話

 合図と共に、アクセルはナダルに斬りかかった。  本来なら少し相手の出方を窺うべきだったのだが、それをすると余計に舐められそうで嫌だったのだ。どうせボコボコにするのは変わらないのだから、先手必勝で斬りかかった方が早いと思った。 「タアアァッ!」  二振りの小太刀をクロスするように、ナダルに向かって振り下ろす。  さすがに正面から斬らせてくれるほど甘くはなく、三日月型の剣であっさり受け止められてしまった。 「おっと、なかなかいい振りしてるじゃねぇか。半人前のくせにやるな」 「……それはどうも」  軽く聞き流し、次の攻撃に入ろうとする。 「だが、危機意識は噂通りのカスだ」 「っ……!?」  ナダルが左手を振り上げてきた。彼の手には錐のような細い武器が握られていた。  急いで離れたものの、右腕に錐が掠って服が裂けて少し血が吹き飛んでしまった。  ――ちっ……剣だけじゃなかったのか……。  左手の武器を見抜けなかったのは、実に残念だ。チェイニーみたいな暗器使いならともかく、ごく普通に握られている武器くらいすぐに気づかないと困る。  イカン……もう少し冷静にならなくては。視野が狭くなってしまうのは、戦う上での致命的な欠陥だ。  今回は掠り傷で済んだが、運悪い目に刺さっていたら片目欠損のハンデを背負わなくてはならない。それはさすがに不便である。  ――まあいい。次からは気を付けよう。  さっさと狂戦士モードになってしまおうか。狂戦士状態なら痛みは感じないし、身体能力も劇的に向上する。  今回はいろんな意味で絶対に負けられないから、早めに畳みかけるのもアリかもしれない。  そう思っていつもの雄叫びを上げようと、腹に力を込めたのだが、 「……っ?」  何やら急激に身体が熱くなってきた。動き回って熱くなったのとは違い、こう……身体の芯が疼いている気がする。  下半身がどくんどくんと脈打ち、妙な興奮状態で全身に鳥肌が立ってきた。  これは一体……?

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