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第1730話

『死合い終了! 勝者、アクセル! 遺体回収班は遺体を回収してください』  ヴァルキリーの声が降ってきたことで、張り詰めていた気持ちがふっ……と緩んだ。  それで一気に力が抜け、アクセルはどっ……とその場に膝をついた。上半身を丸めて蹲り、荒っぽい呼吸を繰り返す。 「はぁ……はぁ……」  全身が痺れる。熱いし、下肢が疼いてたまらない。  直接見なくても勃っているのがわかるから、このままでは恥ずかしくて立ち上がれなかった。  ああ、どうしよう……。こんなんじゃ、誰かに触れられただけで軽くイってしまう。  せっかく勝ったのに、こんな恥ずかしい姿を大勢の前で晒してしまうなんて……。 「アクセルさん、大丈夫ですか?」  遺体回収班の一人が、親切に声をかけてくる。  その気持ちはありがたかったが、今はなるべく近づかないで欲しいというのが本音だ。  もう薬が全身に回りまくって限界だ。兄上、早く来て……兄上……! 「触らないで」  まろやかだが鋭い声が聞こえてきて、アクセルはビクッと肩を震わせた。慣れ親しんだ声音を聞いたらまた気が抜けそうになり、危うくイってしまいそうになった。 「弟のことは私に任せて。きみはあっちのバラバラになってる方を回収してあげなさい」 「は、はい……失礼しました」  体よく遺体回収班を追い払い、兄はこちらに近づいてきた。そして膝を折ってしゃがみ込み、耳元でこっそり話しかけてくる。 「アクセル、歩けるかい?」 「っ……は、あ……」 「……無理そうだね。じゃあお兄ちゃんが背負ってあげるから、泉で毒抜きしよう。もう少し辛抱するんだよ」 「う……」  兄はこちらの身体を上手く隠しながらひょいと背中に担ぎ上げると、そのまま速足で泉に直行した。  ――で、でもこの状況……。  兄の身体で自分の下腹部が隠れるのはありがたいが、その代わり兄の背中に硬くなったものが当たってしまっている。これはこれで恥ずかしい。  かと言って離れることはできないし、もし運ばれている途中、気が抜けて背中にぶちまけてしまったら……。

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