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第1744話

「そういやお前、決勝戦の相手、確認してないよね?」  兄がうどんを啜りながら尋ねてくる。こちらに合わせて軽めのメニューにしていても、兄は相変わらずの大盛りだった。  アクセルは苦笑いしつつ、頷いた。 「ああ、まだだな。明日確認してくるよ。決勝まで勝ち残るくらいだから、相当の強者だろうし」 「だと思って、さっき掲示板で確認してきたよ。次はケイジが相手だ。大変だろうけど頑張って」 「…………はっ?」  アクセルは耳を疑った。名前を聞き間違えたのかと思い、再度兄に尋ねた。 「ええと……兄上、今『ケイジ』って言ったのか?」 「うん、言ったね」 「え、ほんとにケイジ様が相手? 嘘だろ?」 「こんなところで嘘つくわけないじゃない。何でそう思うのさ」 「だってケイジ様は現在ランキング八位だっけ? トップランカーに入る超強者だろ? そんな人がトーナメントに組み込まれてるなんておかしいじゃないか。上位ランカーは死合い免除されてるんだろ?」 「それは七位までね。ケイジはギリギリ八位だから、トーナメントに入ってるんだよ」 「ええ……?」  言われて、だんだん血の気が引いてきた。  直接死合いを見たことはないが、ケイジの強さはアクセルも理解しているつもりだ。何よりとんでもない「修行バカ」で、度を越した修行が原因で命を落とし、それでヴァルハラにやってきたと聞いている。  身体の大きさもランゴバルトに引けを取らず、体力・筋力・腕力・脚力……全て桁違いだ。アクセルのような一般的な戦士が敵う相手ではない。  うどんを食べる手を止め、ポツリと呟く。 「……すまない、兄上。今回ばかりはどんなに鍛錬しても勝てないと思う」 「ありゃ、またお前の弱気発言が始まったよ」 「いや、弱気じゃなくてな……。今の俺じゃ、実力的にどう頑張ってもケイジ様に敵わないんだ。決勝まで十日くらいあるけど、たった十日じゃケイジ様の実力まで近づくのは不可能だし。そもそも積み上げてきた鍛錬量がまるで違うから、死に物狂いで数日努力したって付け焼き刃にしかならないだろう。どう贔屓目に見積もっても、優勝するのは無理だと思う」

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