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第1750話

「……わかったよ、一緒に行こう。その様子じゃ、どうせ止めたって勝手について来ちゃうだろうし」 「う、うん……よくわかったな?」 「そりゃあお前、今まで何度も同じようなことしてきてるじゃない? 留守番してて欲しいのに、勝手に追いかけてきて危ない場所に足を踏み入れるとか……。私からすれば、そっちの方が心配だよ。それだったら、最初から一緒に行った方がいい」 「で、ですよね……」 「でも、透ノ国では本当に何が起こるかわからない。死合いに間に合わないどころか、最悪帰ってこられないかもしれないんだ。それでもいいの?」  兄の視線がまっすぐにこちらを指してくる。  アクセルも怯むことなく、まっすぐ兄を見返した。 「もちろんだよ。兄上と一緒なら、例え地獄の果てに行ってもかまわない。あなたのいる場所が、俺がいるべき場所なんだ」 「……そうか」  兄はこちらの手に自分の手を重ね、言った。 「じゃあ、明日の朝にでも透ノ国に行こう。ピピちゃんには、山に帰るように言っておくんだよ?」 「ああ、わかった」  アクセルは食器を回収がてら、ピピのうさぎ小屋に近づいた。  ピピは出汁がとれたうどんのつけ汁が美味しかったのか、空の寸胴鍋の隣で満足げに寝そべっていた。 「ピピ、今日のご飯美味しかったか?」 「ぴー♪」 「そうか、よかった。……でもしばらく、ご飯は作れなくなりそうなんだ。実は明日から兄上と透ノ国に行くことになって」 「……ぴ?」 「透ノ国って覚えてるか? 大渓谷を落ちていって、その先にある世界だ。ピピも一緒に行ったことあったっけ? ……あまり覚えてないけど」 「ぴ……」 「で、そこで忘れていたものを思い出してくる。俺も兄上も、石板を壊した時の呪いがまだ解けてないというか……あの国に置き忘れてきたものがたくさんありそうなんだ。第六感もそうだし、実力的なものもな。考えてみれば俺、ラグナロク前は三十五位くらいまで行ってたんだよ。それなのに今はようやく二桁なんておかしいだろ? だからもしかすると、実力そのものも落ちているのかもしれないと思って」 「ぴー……」

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