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第1755話
「なるほど。理屈はわかりましたが、二体目を作る理由はなんでしょうか? 一体目は十年ほど前に作ってあるでしょう」
「そうなんだけど、何となく心配になってね。やっぱりスペアは必要かなって」
「スペアですか」
「下界って何が起こるかわからないじゃない? 怪我や病気であっさり死ぬ可能性もあるし。一応強そうな人間に預けてみたけど、成人する前に死なれたら元も子もないわ。戦士 レベルまで強くなればオーディンが勝手にヴァルハラで保護してくれるだろうけど、そうなる前に死んだらまた最初からやり直しだもの。いざって時のために、リスク分散は必要でしょ」
当然のように言い放つ巫女に対し、グロアはやや呆れているようだった。
「安全を優先するのなら、こちらが一から教育すべきなんですけどね……。でもあなたは、身代わりの面倒を見るのは嫌なんですもんね」
「当たり前じゃない。私は誰かに縛られるのは御免なの。その代わり、なるべく丈夫な身体、優秀な魂を選んであげたわ。放っておいても勝手に大きくなって、強くなってもらわないと困るからね」
もうこの時点でくらくらしてきた。
何というか……この巫女の倫理観は一体どうなっているのだろう。全てが狂っていて、どこからツッコんでいいかわからない。夢じゃなかったらブチ切れて暴れていただろう。
それに……。
――話を聞く限り、この赤子は俺になるんだろうな……。
そして下界に置いてきたという身代わりは、兄・フレイン。
自分で面倒を見る気は毛頭ないから、作ったら作りっぱなしのまま、兄に預けて勝手に育つのを待っていたのだろう。
そんな自分本位な理由で勝手に生み出されたことに、今更ながら憎悪の感情が湧いてくる。
巫女はまた別のカプセルを手に取った。
「ところで、この個体なんてどうかしら。髪も茶色で、前回の金髪より見分けやすいと思うんだけど」
「好きなものを選んでください。そのために作りましたから。身体のポテンシャルもほとんど差はないはずですし」
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