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第1757話
あれはあくまで夢だけど……現実ではないけど……でも、巫女やグロアの性格上、ああいうことをやっていてもおかしくないんだよな……。
「ちょ、大丈夫かい? そんなに嫌な夢見てたの?」
「嫌というか……もう、おぞましくて、気持ち悪くて……」
「おぞましい……? まさかお前、夢の中で誰かに犯されて……」
「いや、そっち系じゃないから安心してくれ。ただその……巫女とグロアが何やら変なことしてて、そのせいで気持ち悪く……」
「ああ、そういうこと……」
兄は何かを察したように、小さく溜息をついた。そして背中を優しくさすり、慰めるように言ってくれる。
「まあ、お前が見たのはあくまで夢だから。実際に彼女たちが何をしていたかまでは、今となってはわからないよ。あまり深く考えちゃいけない」
「そ……そう、だよな……」
「そうだよ。今は彼女たちのことより、私たちの方が重要だ。早いところ取り戻すものを取り戻して、ヴァルハラに帰らないと。ねぇ、ピピちゃん?」
「ぴー♪」
横からピピも身体をすり寄せてくる。どうやらピピもあの後すぐに飛び降りてくれたらしい。根は臆病なのに、よく谷底にダイブできたものだ。アクセルなんか、直前までビビりまくっていたのだが。
「落ち着いたかい?」
「あ、ああ……なんとか」
「よしよし。じゃあ行こうか」
と、兄が立ち上がる。アクセルもゆっくり立ち上がり、兄を見た。
「行くって、どこに行くつもりなんだ? 何かあてがあるのか?」
「いや、ないけど。でも何かしら収穫はありそうだよ」
兄が指差した方向を眺める。
のどかな青空に、雲のような小島がいくつも浮かんでいるのが見えた。どれも同じような小島かと思いきや、そのうちのいくつかは、どこかで見覚えがあるような場所だった。
「あれ……俺たちが育った村に似てる……?」
「そんな気がするよね。もちろん私たちの故郷だけじゃなく、アロイスくんの故郷っぽい小島もあるみたいだよ」
「……!」
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