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第1758話
「透ノ国はどの世界にも繋がっていないけど、全ての世界が集合しているのかもしれないね。それこそ、世界の全てを記録しているみたいに」
「世界の全てを……」
「だから私たちの記憶も、あの小島のどこかに点在してるんじゃないかなって。とりあえず、できる限り回ってみようか」
言われた通り、アクセルは兄の後ろから小島を散策し始めた。
ただ闇雲に歩いているだけで何かが起こるとも思えなかったが、その場にじっとしているよりはずっといい。何かしらの発見があるかもしれない。
ちなみに小島から小島への移動は、小島の端に足を踏み入れると自動的に行われるみたいだった。
一度小島の端から行ったり来たりしてみたところ、別の小島から兄が手を振っているのが遠目に見えたので、こちらも手を振り返した。何度も移動を繰り返しているうちに移動の法則性も見えてきて、三つ前に立ち寄った小島等にも戻れるようになってきた。
「結構な数を見て回ってきたけど……お前、何か気付いたことあった?」
途中の小島で小休止しながら、兄が尋ねてくる。
小休止と言ってもカフェみたいなおしゃれな店があるわけではなく、誰もいない空き家に勝手に侵入して腰を落としているだけだ。
「気付いたことというか……今更だけど、ここはやっぱり不気味な場所だな」
「不気味って?」
「これだけ歩き回っているのに、誰にも遭遇しないじゃないか」
どれだけの時間歩き回ったかはわからない――が、人どころか動物や神獣なども全く見かけないのはさすがにおかしいだろう。
一応、自分たちの故郷らしき村も訪れてみたものの、肝心の村人は誰もいない。懐かしい家や景色は再現されていたが、そこで生活しているはずの人が一人もいないという奇怪っぷりだった。
そのせいで、懐かしさよりも不気味さの方を強く感じてしまう。
「誰もいないのは今に始まったことじゃなくない? ラグナロク中に来た時も、誰にも遭遇しなかったし」
と、兄が何でもないことのように言う。
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