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第1760話
「あ、ああ……実は……」
アクセルは夢で見た内容を話した。
予言の巫女とグロアが、身代わりとして新しい赤子を作っていたこと。そこで作られていたのは自分・アクセルだったこと。十年ほど前、兄・フレインも同じような方法で作られていたこと。候補となる身体はいくつもあったが、選ばれなかった身体は全部廃棄されてしまったこと……云々。
「……なるほどね。道理でお前の顔色が悪くなるわけだ」
話を聞いても兄の顔色は変わらなかったが、目の奥には怒りとも呆れともとれるような複雑な感情が渦巻いていた。
「まず大前提として、お前が見たのはあくまで夢だ。本当にあったかどうかはわからない。巫女は消えたしグロアも死んじゃったから、確かめようがないしね」
「う、うん……」
「ただ、正直なことを言うと、そういうことをやっていてもおかしくないなとは思ってる。巫女とグロアのことだからね。予備の身体をたくさん作って、厳選した一体に魂を入れる……みたいなこと、平気でやっちゃうだろう」
「兄上ですらそう思うのか……」
「だって、グロアの隔離施設で似たようなことが行われていたもの。お前も見たでしょ、私そっくりのコピーたちを」
「…………」
「それに、あの巫女が自分の腹の中に赤子を抱えて何ヵ月も耐えられるはずがない。絶対にすぐ音を上げちゃうよ。私たちを育てることですら、放棄して遊び歩いていた人だしさ」
「それはまあ、な……」
「だから、そういう非人道的なことをやっていても驚きはしないね。怒りはするけど」
「そうか……」
思った以上に、兄の反応はあっさりしたものだった。
自分の出自については完全に割り切っているというか、最初から「そんなもんだろう」と考えているようだった。
アクセルは少し肩を落として、言った。
「でもそうなると、俺と兄上は……本当の意味で、血が繋がっているわけじゃないってことになるな……」
「おや、今更そこで悩んじゃうの? お前、その辺りのことはもう吹っ切れたんじゃなかったっけ?」
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