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第1761話
「ああ、うん……。あまり気にしないように努めてた、けど……ああいう夢を実際に見ちゃうとどうしてもな……」
気にしないようにしていた問題を蒸し返された気分だ。
あの巫女が腹を痛めて自分を産んだとは思えなかったが、あんな方法で生み出されていたというのもそれはそれでショックである。
まだあの夢が真実かどうかわからないけど、自分たちが当たり前の方法で生まれたわけではないことは確かなようだ。
すると兄は真顔でこう言った。
「血が繋がっていようがいまいが、お前は私の可愛い弟だよ。お前だって私のこと、敬愛するお兄ちゃんだって思ってるでしょ?」
「それはもちろん……」
「だったらいいじゃない。むしろ、巫女の腹から生まれるより特別な感じがしない? 厳選された一体同士なんて、すっごくレアな兄弟でしょ」
「そ、そうかな……?」
「少なくとも、私はそう思う。ある意味、血の繋がりよりずっと強力な結びつきだよ。惹かれ合うのも当然だよね」
兄がこちらに手を差し伸べてくる。
「さ、行こうか。あまりゆっくりしていたら、決勝戦に間に合わなくなってしまう」
「……ああ、そうだな」
兄の手を取り、アクセルも立ち上がった。そして問題の大穴に向かってみた。
ざっと調べてみたところ、穴そのものには何の仕掛けもなく、梯子らしきものもかかっていなかった。
が、穴の近くの地面に鉄製の大きな扉が埋め込まれており、それを兄と二人がかりで開けてみたら、案の定下に続く階段が見つかった。
「透ノ国にしては随分原始的だな。もっとこう、下へ向かうワープゾーンみたいなものがあるのかと思っていたんだが」
「確かにね。こんな隠し階段を設置するなら、わざわざ大穴を作る必要ないのに。全然隠せてないし、『どうぞ下に降りてください』って言ってるようなものだよ」
「……これも罠か?」
「どうだろう? 今更私たちを罠に嵌める理由もない気がするけど」
兄は特に気にすることなく、階段に一歩足をかけた。
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