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第1762話
「ほら、お前も早くおいで。お兄ちゃんが一緒なんだから怖くないよ」
「べ、別にビビッてるわけじゃないぞ」
兄がスタスタと階段を下りて行ったので、アクセルも後ろをついて行った。
ピピはさすがに階段を通れないので、入口近くで待ってもらうことになった。
「なるべく早く戻ってくるからな? いい子で待っててくれよ?」
「ぴー……」
「ピピが待っててくれれば、俺もやる気になってすぐ帰ってこようって思える。だからピピは、変なヤツがここから入って行かないように見張ってて欲しいんだ」
「ぴ!」
そういうことなら任せろ、と言わんばかりにピン、と耳を立てるピピ。
アクセルはそんなピピを優しく撫で、階段を下りた。
思った以上に階段が長く、下がっていくにつれて道も暗くなってきて、前を歩いている兄の姿が見えなくなりそうだった。
「兄上、そこにいるよな……?」
「うん、いるよ? なんで?」
「いや、それならいいんだ。ちょっと前が見にくくて……」
「ああ、道暗いもんね。じゃあ手を繋いでいく?」
「そ、そこまでではないから……」
「そう? じゃあマント掴んでていいよ。そうしてくれた方が、お前がちゃんとついてきていることがわかって、私も安心する」
そう言われたので、アクセルは兄の片マントの端をそっと摘まんだ。何も触っていないと不安だが、これなら兄の存在を確かめられる。それだけでも随分安心できた。
そのまま下に降りていき、とある開けた場所に出る。
暗かった道が急に明るくなったので、アクセルは反射的に手で光を遮った。
「おや、ここは……」
兄が周囲を見回している。
そこは研究施設のような場所で、素人にはよくわからない機械や器、ストレッチャーなどが大量に置かれていた。
ただ、しばらく使われていないみたいで、片付けも中途半端なまま放置されている。
嫌な汗が背中を伝い、アクセルはポツリと呟いた。
「夢で見た光景とよく似ている……」
「……そうかい。だったらお前の言う、『カプセルに入った赤子』もいるかもしれないね」
「もしいたらどうするんだ……?」
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