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第1763話
「そりゃあ、始末するしかないでしょ。魂が入っていない身体なんて、ただの肉塊だもの」
「…………」
「ここまで来たなら、お前も覚悟を決めなさい」
厳しいことを言われ、アクセルは無言のまま目を伏せた。
兄の言うことは正しい。いい加減、覚悟を決めなければいけないというのもわかる。
だけど、いざその場に直面した時、自分は躊躇なくカプセルを始末できる自信がない。片付けなければいけないのは承知しているが、「もしかしたらこれが俺になっていたのかも」などと考えてしまうと、どうしても……。
「ふむ、これは興味深いものがたくさん見つかりそうだね」
こちらの迷いなどそっちのけで、兄は施設にあった本棚に手を伸ばした。
そこには大量のファイルが保管されていて、タイトルだけで十分怪しいものもたくさんあった。「参考にした個体情報」だなんて、見るだけでも恐ろしい。
「おっと、これは……」
兄は一冊のファイルを興味深そうに閲覧していた。そしてそれをこちらにも見せてくる。
「ねえ、ここ見てよ。どうやら私とお前は、元になったモデルがいるみたいだよ」
「……え? 元になったモデルって……俺たちは、その……巫女の要望に従ってグロアがデザインしたんじゃ……?」
「ところがそうじゃないみたい。ほら」
兄が示してきたページを恐る恐る見てみたら、成人男性と思しきラフ画が二体出てきた。
あくまでラフだったのですぐには気付かなかったが、そのラフはバルドルとホズを描いたものだった。
「え……バルドル様と、ホズ様……?」
「うん。私はバルドル様をモデルに作られてて、お前はホズ様をモデルにされてるみたい。道理で雰囲気が似てるはずだよ」
「そんな……。それじゃあ俺たちは、バルドル様とホズ様のコピーってことに……」
「いや、コピーとはまた違うんじゃないかな。肉体は似せて作ってあるけど、魂は別物だし。そこは『へー』くらいで留めておいていいと思う」
「そ……そうかな……」
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