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第1764話
「それより、問題なのは次のページからだね。『検体〇〇一』みたいに番号が振られてて、その全部に『満足度○%』って書いてある」
「え……?」
言われた通りページをめくったら、「検体〇〇一」から順番に番号が振られたデータがズラーッと並べられていた。何番まであるのかわからなかったが、たくさんの検体を用意していたのは確からしい。
「何だよ……これ全部量産された赤子なのか? 倫理観の欠片もないな」
「まあそれは今更なんだけど、気になるのが一番終わりのページにある『最高傑作』の個体ね。他のページには『廃棄』のスタンプが押されてるのに、そこだけスタンプがない」
「……押し忘れじゃないのか?」
「だったらいいんだけど……もし押し忘れじゃなかったら、今もこの研究施設に残っている可能性がある」
「え……」
「ちょっと捜してみようか」
「えっ!? あ、兄上……!」
止める間もなく、兄はスタスタと施設の奥に進んでいった。仕方なくアクセルもその後に続いた。
施設の奥も引き続き、資料や機械、試験管などがたくさん並んでいた。デスクの上には資料なのか記録なのか、それともただの書き損じなのか、A4サイズのペーパーがたくさん散らばっている。あえて中身は見なかったけれど、どれもこれも怪しいことが書いてあるのは間違いなかった。
本当に……嬉々としてこんな研究を繰り返すとか、頭おかしいんじゃないか。巫女もグロアも、他人の命を何だと思っているんだ。
――というか、こんな場所から得られるものなんてあるんだろうか……。
失われていた力を取り戻すためにやってきたはいいけれど、今ここで出生の秘密を明かされても、アクセルにとってはあまりプラスにならない。逆に動揺して、トーナメントの決勝戦に悪影響を及ぼしそうだ。
ああもう、早く帰りたい。早く帰って思いっきり鍛錬したい。兄上と狩りにでも行きたい。買い物でもいいや。趣味の木彫りに没頭するのでもいいな。
生まれがどうあれ、今こうして二人共無事に生きているんだから、それでいいじゃないか……。
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