1765 / 2296
第1765話
「おや」
不意に、兄が脚を止めて前を見た。
危うくぶつかりそうになり、アクセルも慌ててその場で足踏みした。
「……って、これは……?」
前を見た途端、あまりの光景に愕然とした。
そこには巨大なひとつのカプセルが置かれており、中に大きなサナギらしきものが残されている。
動いてはいないものの、生きているのか死んでいるのか、見ているだけでは判断がつかなかった。
「何だよ、これ……。何で急にこんな場違いなものを……」
「まるでサナギだね。中からとんでもない昆虫が出てきたりするのかな?」
「や、やめてくれよ……そんなグロテスクな」
「まあ昆虫は冗談だけど、この中で身体のコピーを作っていた可能性はあるね。それで生み出された身体は別のカプセルに保管していたとか」
「え……」
「ま、今更驚くことでもないよね。巫女の腹から生まれていないのなら、サナギだろうがカプセルだろうが同じことだ」
「……そうかもしれないな」
アクセルは深く息を吐いた。
思うところはたくさんあるが、自力ではどうにもならないことに頭を悩ませていても仕方がない。さっさとやるべきことをやって、早くヴァルハラに帰ろう。
「それで兄上、このサナギどうするんだ?」
「うーん……一応、始末しておく? 万が一何かが残ってたら大変なことになるし。ほら、もしかしたら『廃棄』のスタンプが押されてなかった『最高傑作』とやらが中にいるかも」
「う……。それはそれで、いろいろ気が引けるな……」
「余計な情けは無用だよ。今このタイミングで生まれてこられても、私たちにはどうすることもできないからね」
「まあ、な……」
兄が太刀を構えたので、アクセルも二振りの小太刀を抜き放った。
そして二人で外側のカプセルを叩き割り、巨大なサナギを露出させた。
カプセルを割った途端、変な液体が飛び散って自分たちの衣装を大幅に濡らした。気持ち悪い。
続いてサナギに刃を突き立てようとした時、突然ぶるぶるとサナギが動き始めた。
ともだちにシェアしよう!

