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第1765話

「おや」  不意に、兄が脚を止めて前を見た。  危うくぶつかりそうになり、アクセルも慌ててその場で足踏みした。 「……って、これは……?」  前を見た途端、あまりの光景に愕然とした。  そこには巨大なひとつのカプセルが置かれており、中に大きなサナギらしきものが残されている。  動いてはいないものの、生きているのか死んでいるのか、見ているだけでは判断がつかなかった。 「何だよ、これ……。何で急にこんな場違いなものを……」 「まるでサナギだね。中からとんでもない昆虫が出てきたりするのかな?」 「や、やめてくれよ……そんなグロテスクな」 「まあ昆虫は冗談だけど、この中で身体のコピーを作っていた可能性はあるね。それで生み出された身体は別のカプセルに保管していたとか」 「え……」 「ま、今更驚くことでもないよね。巫女の腹から生まれていないのなら、サナギだろうがカプセルだろうが同じことだ」 「……そうかもしれないな」  アクセルは深く息を吐いた。  思うところはたくさんあるが、自力ではどうにもならないことに頭を悩ませていても仕方がない。さっさとやるべきことをやって、早くヴァルハラに帰ろう。 「それで兄上、このサナギどうするんだ?」 「うーん……一応、始末しておく? 万が一何かが残ってたら大変なことになるし。ほら、もしかしたら『廃棄』のスタンプが押されてなかった『最高傑作』とやらが中にいるかも」 「う……。それはそれで、いろいろ気が引けるな……」 「余計な情けは無用だよ。今このタイミングで生まれてこられても、私たちにはどうすることもできないからね」 「まあ、な……」  兄が太刀を構えたので、アクセルも二振りの小太刀を抜き放った。  そして二人で外側のカプセルを叩き割り、巨大なサナギを露出させた。  カプセルを割った途端、変な液体が飛び散って自分たちの衣装を大幅に濡らした。気持ち悪い。  続いてサナギに刃を突き立てようとした時、突然ぶるぶるとサナギが動き始めた。

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