1766 / 2296
第1766話※
「っ!」
驚き、反射的に距離を取る。
何が起こるのかと身構えていたら、サナギがバリッと割れて中から何かの頭らしきものが出てきた。だけど普通の大きさではなく、サナギと同等の大きさがある。
「キエェェェ!」
次いで、赤子の泣き声のような轟音が施設内に響き渡った。泣き声といっても純粋な泣き声ではなく、獣の雄叫びに近い。
そんな爆音を近くで聞いたせいか、生理的な不快感に頭がくらくらしてきた。
「キィィィィ!」
激しく鳴きながら、中のものがサナギを破って床を這いずってきた。
だがそれは、残念ながら人の形をしていなかった。頭だけが巨大化した化け物だった。肌も赤子のすべすべしたそれではなく、鱗か何かに覆われており、色もくすんだ緑色に近い。どちらかというと爬虫類の皮膚に見える。
そしてその頭は、ゴロゴロ転がってこちらに近づいてきた。
「……これがグロアの最高傑作なのかな? 傑作すぎて吐きそうだ」
兄がげっそりしたように言う。さすがの兄も、化け物の頭の登場には気分が悪くなってしまったようだ。
アクセルも大いに同意しつつ、小太刀を構え直した。
「……本当に反吐が出るな。ここまでくると、理解しようとも思えなくなる」
どうしてこんなものを生み出したのか……なんて、考えてもわかるはずがない。
巫女もグロアも、元々頭のおかしい狂人だ。狂人の考えを理解できたら、こちらも狂人の仲間入りになってしまう。
だから、彼女たちが何を思って化け物 を作ったかは永遠の謎だ。
ただ……もしかしたら自分がこんな風になっていたかもしれない……と思うと、この爬虫類風の頭には同情を禁じ得ない。
「タアアァァッ!」
「ギェアアァァッ!」
兄と二人、生まれたばかりの頭に武器を突き立てた。
やや硬い鱗とすぐ下の頭蓋骨のせいで、切れ味のいい刀であってもスッパリ斬るのはなかなかテクニックが必要だった。
「キ、キィィィ……!」
頭はつんざくような悲鳴を上げ、緑色の体液をぶち撒けてその場に沈み込んだ。
ともだちにシェアしよう!

