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第1768話
「やっぱりあの頭、元は普通の身体だったみたいだ。そこに私とお前に入れたのと同じ魂を、二ついっぺんに突っ込んだみたい」
「二ついっぺんに……? だから斬った時に魂が二つ出てきたのか?」
「そう。でも、ひとつの身体に二つの魂は負担が大きかったみたいで。頭だけ肥大化して、サナギの中で昆虫みたいな見た目になっちゃったらしい。突然変異みたいな感じかな」
「はあ」
「サナギに入ってたのも、身体の開発を続けるにあたって、だんだん『カプセルよりサナギの方が有効』って判明したからみたいだね。サナギの方が身体の成長も早くて、丈夫な子に育つ傾向があるらしいよ。私はお前より十年早い個体だから違うだろうけど、お前は本当にサナギから生まれているかも」
「え……」
そう言われて、一瞬身体が固まった。
巫女の腹から生まれていないであろうことはわかっていたが、だからといってサナギから生まれたというのも何やらぞっとしない話である。
というか、どうせなら兄と同じくカプセルから生まれたかった。一人だけサナギだなんて、なんだか悲しいではないか……。
「あ、ごめんね。別にサナギがいけないって意味じゃないんだ」
視線を落としていると、兄が慌ててフォローしてきた。
「ただ、お前の方が後に生まれたから、身体的に優れているはずだよねって話。お前はよく『兄上に勝てない』って言うけど、普通に鍛錬していれば私を追い抜くことなんて簡単なはずなんだ。今までそれができていなかったのは、単に欠けていたところがあったからじゃないかな」
「え……」
「これからはきっと、ランクもガンガン上がるし私より強くなるのも時間の問題だよ。頑張って。お兄ちゃん応援してる」
「あ、いや……」
今度はやや突き放すようなことを言われ、アクセルは更に動揺した。
弟の方が優秀というのは、今までの兄弟関係を根底から揺るがす一大事だ。
兄に追い付きたいとは思っているが、抜かしたいとは思っていない。アクセルが目指しているのはあくまで対等な関係であって、圧倒的な実力の差ができてしまうのは本意ではないのだ。
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