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第1772話

「さ、早く帰ろう。お腹空いて死にそうだ」  急いで世界樹(ユグドラシル)を通り、ヴァルハラに戻る。  ヴァルハラに戻っても一分、一秒が惜しくて、家までみんなで走って帰った。もちろんピピが一番だった。  その後、庭の露天風呂に急いで湯を張り、家族仲良く身体の汚れを落とした。 「こらピピ、おとなしくしててくれ。それじゃ全身洗えないぞ」 「ぴー♪」 「はは、ピピちゃん珍しくはしゃいでるね。透ノ国への遠足が楽しかったのかな?」 「遠足って……そんな愉快なものではなかったと思うんだが」  じゃれついてくるピピを一生懸命いなしつつ、アクセルはスポンジでピピの身体を洗った。毛並みが白いピピは汚れが目立ちやすいので、ボディーソープをたっぷり使い、何度も洗っては流し、洗っては流しを繰り返した。 「それにしても、アレの体液ヤバいね。なかなか落ちないや」  兄が隣で、再度身体を洗いながら口を尖らせる。 「この分じゃ、私たちの服もダメになってるかも。念入りに洗っても落ちなさそうだ」 「うーん……そうなんだよな。臭いや粘っこい感覚がまだとれてない気がするし……服は処分して、新しいのを用意した方がいいかもしれない」 「まったく……こんなところでも嫌がらせをしてくるなんて、巫女もグロアも性格悪いね。ホント、何を思ってあんな化け物作ったんだか」 「狂人の思考なんて、理解できない方がいいだろ。もう終わったことだから、これ以上考えないようにしよう」 「まあね。でもあのマント、新調したばかりだったのに……なんか悔しい」  不満げに身体を擦っている兄。  それを横目で見つつ、アクセルは思った。  そうだ、今度兄に新しいマントを買ってあげよう。様々な困難を乗り越えてきた記念に、こちらからプレゼントをするのだ。きっと兄も喜んでくれるだろう。  念入りに身体の汚れを落とし、スッキリして風呂を出た後、すぐにアクセルは食事の準備に取り掛かった。  だいぶ喉も渇いていたので、ハチミツ入りレモン水を飲みながら調理していたら、出来上がる頃にはストックのレモン水が空っぽになっていた。

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