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第1773話

「兄上、できたぞ」  露天風呂の掃除をしている兄に、声をかける。  兄はデッキブラシを放り出し、いそいそと室内に入ってきた。 「あーよかった。お腹空きすぎて、掃除しながら倒れるところだった」  軽く手を洗い、早速兄が席に着く。  昼食だが、家にあった食材をほぼ使い切ってステーキや野菜スープ、バゲット等を大量に作った。夕食の食材がないから、後で兄と市場に買い出しに行こう。  その後しばらくは、全員夢中で食事を平らげた。ピピにも大鍋で野菜スープをたっぷり与えたはずなのに、あっという間におかわりをねだられてしまった。 「はぁ……やっと一息ついた」  兄がお茶を飲み干し、長い息を吐く。大食漢の兄は、用意した料理を瞬く間に消費してしまった。 「というか、結局あれから何日経ったんだろう? お前、確認した?」 「いや……そもそも帰ってから風呂と食事しかしてないし」 「じゃあ夕飯の買い出しついでに、掲示板も見に行こうか。間に合うものならお前の決勝戦、見てみたいし」 「ああ、そうだな……」  アクセルもお茶のカップに口をつけた。  ――そうだ、決勝戦の相手はケイジ様なんだよな……。  透ノ国に行く前は、「自分なんかが敵うはずがない」と最初から諦めていた。  でも今は、「もしかしたらいい勝負ができるんじゃないか」と考えが変わりつつある。地下施設でいろいろあったから、明日辺りきちんと鍛錬して自分の調子を確かめておこう。  その後、使った食器を片付け、世界樹(ユグドラシル)前を経由してから市場に向かった。  世界樹(ユグドラシル)前の掲示板にはまだトーナメント表が貼られており、C、Eブロックの決勝戦が残っているみたいだった。他のA、B、Dブロックは既に決勝戦が終了してしまったみたいで、優勝者が決定している。 「……変だな。Aブロックから順番に決勝戦が行われるはずなのに、何故Cブロックだけ飛ばされているんだ?」 「さあ? 何か事情があったんじゃない? 理由はどうあれ、私はお前の決勝戦を見られて嬉しいよ」  兄がにこりと微笑んでくる。

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