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第1775話

「うむ、私も楽しみにしているぞ。何があったかは知らぬが、今の弟君ならいい死合いができそうだ」  そう言ってもらえると、すごく励みになる。  アクセルは兄と家に帰り、夕飯までの間庭で軽く身体を動かすことにした。  まずは準備体操がてら、筋肉を解すストレッチを行う。ピピも小屋から出てきて、その様子を見ていてくれた。 「うーん……身体の柔らかさはさほど変わってない気がするが……」 「ぴ……?」 「まあ、変わったのは中身だからな。素振りをすればきっと違いがわかるだろ」  そう思い、軽く走り込みをした後、素振りを行った。  太刀筋矯正のために使っている柱の間に何度も小太刀を振り下ろしたところ、一度も引っ掛かることはなかった。  ――以前はほとんど感覚で振り下ろしてたんだけどな。今は自分の太刀筋が見える……。  動体視力が上がっているのだろうか。それなら、ケイジの動きも目視できるようになるかもしれない。  嬉しくなり、アクセルは夢中で鍛錬に打ち込んだ。走り込みもみっちり行ったし、腹筋・背筋・腕立て伏せ、スクワットもしっかり行い、全身の筋肉に負荷をかけた。 「アクセル、そろそろご飯にするよ」  日が暮れてきた頃、兄がベランダから声をかけてきた。白いエプロンがいつもよりよく似合っていた。 「お前、すごく一生懸命鍛錬してたね。いきなりそんなに飛ばして大丈夫かい?」  テーブルに熱々のハンバーグを並べながら、兄が言う。タンパク質を効率的にとれるように、いろんな動物のひき肉を加えたらしい。  アクセルは席に着きながら、答えた。 「それが、全然スタミナが切れた感じがしなかったんだ。兄上も明日鍛錬してみるといいぞ。以前と違うことがわかるはずだ」 「そっか。じゃあ明日は、私もお前と鍛錬してみようかな」  兄と鍛錬できるなら、これほど嬉しいことはない。  アクセルは笑顔で兄が作ってくれたハンバーグを頬張った。美味しかったものの、牛と豚以外の肉も入っていたみたいで何だか新鮮な味だった。

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