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第1786話*

 ただでさえ大きな楔なのに、この上更に大きくなったら、さすがに苦しくて息ができなくなる。 「んんッ……! う、くるし……! 兄上、大きくしないで……!」 「ごめんごめん。お前があまりに可愛いこと言うから、つい……」  ぜぇぜぇ喘いでいる唇を、軽く啄まれる。  兄はこちらの身体を横に向けると、背中に回った腕を取ってハンドタオルを解いてくれた。 「ほら、これでいいよね? くれぐれも殴らないように気を付けて」 「は……ぃ……」  ようやく腕を解放され、アクセルは目の前の兄に縋りついた。  ずっと背中に敷いていたのですぐには感覚が戻らなかったけれど、兄に触れたい一心でその背に腕を回す。  両脚もなるべく大きく開いて兄の腰に絡め、力を込めてしがみついた。 「うぅ、う……兄上……」 「もう、なんだかやけに甘えん坊だね。そういうところもすっごく可愛いけどさ」 「兄上、好き……大好き……兄上ぇ……」 「うんうん、知ってるよ。私もお前が大好きさ」 「うぅ……ぐす……」 「だからほら、もう泣かないで。お前にずっと泣かれたままだと、私も困っちゃう」 「う……」  兄にしがみついたまま、ひっく、としゃくりあげる。  自分から兄に触れたら、もやもやした不安がだんだん形になってきて、アクセルは途切れ途切れに言葉を吐き出した。 「怖かった、んだ……。ホント、は……ずっと不安、だった……」 「そうなのかい? 何が不安だったの?」 「俺……透ノ国で、魂吸収して……パワーアップ、して……鍛錬も捗った、けど……、何か、こう……変な風に変わっちゃったんじゃないかって、思って……。兄上との関係、も……変に変わっちゃったら、どうしよう、って……」 「……ああ、なるほどね」 「か、身体の方も……いつもより、すごく感じてしまって……感じすぎて、頭おかしくなりそうで……。もしかしたら、俺……悪い方に変わっちゃったのかも、って……」 「ふふ、そっか」  軽く微笑みつつ、兄がよしよしと頭を撫でてくれる。  子供をあやすように優しく、何度もキスを落としてくれた。

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