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第1789話

 ――ああ……兄上……。  もうほとんど力が入らなかったが、アクセルは真っ直ぐに兄を見上げた。  俺、やっぱりあなたのことが好きだ。心や身体がどんなに変わってしまったとしても、この気持ちだけはずっと変わらない。だからこの先も、いつ如何なる時も、あなたの側に置いて欲しい。  許してくれるよな、兄上……? 「……アクセル?」  兄が呼びかけてくれたが、その声すらも今は遠く聞こえた。  アクセルはそのまま気を失った。 ***  ――ありゃ……ちょっと無理させすぎたかな。  失神した弟を見下ろしつつ、フレインはずるりと己を引き抜いた。念のためピタピタと頬を叩いてみたけれど、やはり弟は目を覚まさない。  まあ、あれだけイきまくっていたのだから力尽きて当たり前だが。 「でもホント……何も変わってなくてよかったよ……」  なでなでと弟の頭を撫でる。  そこまで心配していなかったとはいえ、ガラリと変わってしまった可能性も否定できないなぁ……と思っていた。身体の相性が悪くなっていたらどうしよう――それこそ、挿入した瞬間の感覚が異なっていたら……などと、密かに懸念していたのだ。  アクセルが「悪い方向に変わっちゃったんじゃないか」と泣いていた気持ちも理解できる。  でもまあ、結果的に杞憂で終わったからめでたし、めでたしだ。  ――物事が変化する時は、多かれ少なかれ不安になるものだよね、アクセル?  小さく微笑みながら、フレインはゆっくり身体を起こした。  そしてぐったりとベッドに沈み込んでいる弟を横に抱きかかえ、浴室に向かった。 *** 「ん……」  翌朝、アクセルは陽が高くなってから目を覚ました。  今何時だ……? と時間を確認したら、午前十時を過ぎていた。  ――うわ、やば……! もうこんな時間か……!  慌ててベッドを降り、リビングに向かう。  身体の違和感はなかったので、兄が全部何とかしてくれたのだろう。就寝用のジャージも着せられていたし、事後のケアをきっちりしてくれるのは助かる。  ……中の掃除までされてしまったのは、さすがにちょっと恥ずかしいけど。

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