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第1794話

「実感があろうがなかろうが、ランク的にはそれくらいのレベルになってるってこと。お前もそろそろ上位ランカーの自覚を持った方がいいかもしれないね」 「う、うん……」 「まあ狩りは引率する側がどこに向かうか決めていいから、最初はあまり険しい山に入るんじゃなく、麓の安全な場所に行くのがいいと思うよ。何ならピピちゃんも連れて行ったら? いざって時は頼りになるし、ねぇ?」 「ぴー♪」  山に連れて行ってもらえると知り、ピピが嬉しそうに耳をパタパタさせた。  兄はピピを撫でつつ、続けた。 「ま、それはトーナメント後の話だけどね。とにかく、死合い後もやるべきことはたくさんあるんだ。だからこう……死合いだけに盲目的にならないよう、広い心で挑んできなさい」 「……ああ、わかった」  それを聞いたら、少しだけ気持ちが軽くなった。  仮にトーナメントで優勝できなくても、その先の仕事はたくさんある。何なら兄を指名するまでもなく、自然と死合いでマッチングするかもしれない。自分のランクも上がってきたから、その可能性は十分ある。  だから勝ち負けにはこだわりすぎず、胸を借りるつもりで挑んでこよう。  気を取り直し、アクセルは素振りを再開した。気合いが入り過ぎていたのか、三回くらい振ったところでザクッと丸太に刃が食い込んでしまった。ランクが上がっても、まだまだ修行が足りないようだ。 ***  二週間後、ケイジとの決勝戦の日がやってきた。  圧倒的強者との死合いだと思うと前日から緊張してしまって、昨夜はあまりよく眠れなかった。 「お前、ガッチガチに緊張してるね?」  兄が気持ちを和らげるというハーブティーを出してくれる。 「そんなに緊張しなくて大丈夫だって。気負う必要はないって言ったじゃない」 「い、いや、気負っているつもりはないんだ……。それに、死合いが始まっちゃえば普通に動けるから大丈夫だろう」 「……まあいいけど。私も応援しに行くんだから、くれぐれも瞬殺されないように気を付けてよ?」  兄本人がプレッシャーをかけている気がしたが、アクセルは苦笑いで受け流した。

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