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第1795話
身支度を整え、一足先にスタジアムに向かう。兄はあくまで観客なので、開場の時間になるまで家の片付けをしているそうだ。
スタジアムの裏手に回り、戦士控え室に入る。手荷物をロッカーに預けようとしたのだが、手が震えてなかなか取っ手を掴むことができなかった。
――はあ……さすがに緊張しすぎだろ、俺……。
少しでも身体を解すべく、控え室で軽くストレッチを行ってみる。それでもしばらくは震えが止まらなくて、奥歯がカチカチ音を立てていた。
みっちり三〇分くらいストレッチしたらさすがに収まってきたが、今更こんなに緊張するのもおかしな話である。
死合い前に武者震いするのはよくあることだけど、圧倒的強者を前に緊張するというのなら、ランゴバルトと戦った時はどうだったんだという話だ。あの時は団体戦だったけれど、死合いの緊張感は個人戦と変わらないのではなかろうか。ケイジの時だけめちゃくちゃ緊張するというのも妙である。
――透ノ国でパワーアップしたこととも関係あるのかな……。
やや違和感を覚えたものの、だんだん震えもなくなってきたのでアクセルは無理矢理気持ちを切り替えた。今は目の前の死合いに集中しないと。
時間になったので、入場口から広場に向かった。ケイジも反対側の入口からこちらにやってきた。
既に観客席には大勢の戦士が詰めかけており、自由席はほとんどスシ詰め状態になっていた。
念のためボックス席に視線を向けたら、ミューやジーク、ユーベルらと共に兄も着席してこちらを見下ろしていた。それを見たら、少しやる気が出た。
『えー、テステス。これもうマイク入ってる? ……あ、そう。んじゃ、ただいまよりトーナメント決勝戦、ケイジVSアクセルを始めまーす』
唐突にいい加減なアナウンスが降ってきて、違う意味で度肝を抜かされた。
ケイジは腕組みをしたまま仁王立ちをしていたが、小さく首を振って呆れた表情になっていた。
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