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第1796話
『えー、一応ルールを説明しとくけど、どっちかが戦闘不能になった時点で勝敗が決定しまーす。ほとんど引き分けだったとしても、アタシの千里眼でどっちが先に倒れたか目視判定するんでー、そこんとこよろしくー』
……などと、のたまってくる天の声。
内心出鼻を挫かれていると、天の声は更に続けた。
『というわけで、死合い始めちゃってー。アタシ忙しいから、チャッチャと決着つけちゃってよ』
そんなことを言われ、アクセルは完全に困惑した。
――え、これ始めていいのか? 開始のカウントダウンってないのか?
観客もザワザワと不審がっている。
念のためケイジの様子を窺うと、ケイジは腕組みをしながらゆっくりと首を回していた。
「……ふむ、まあ始めろというのなら始めてかまわんか。やや勢いは削がれるが……この程度で動揺していては、ヴァルハラで生活できん」
「そ、そうですね……」
「準備ができたらかかってくるといい」
そう言ってケイジは腕を解き、やや腰を低くした。
それだけでも凄まじい覇気を感じてしまい、ぞくっと背中が痺れた。
――やっぱりケイジ様、すごい迫力だ……。
身体も大きいし、筋肉量も自分とは比べ物にならないし、修行僧のような雰囲気も相まって、対面しているだけで怖気づいてしまう。
だが死合いが始まった以上はそんなことも言っていられない。アクセルは胸を借りるつもりで、ケイジに向かって突進した。
「タアアアァッ!」
二振りの小太刀を素早く抜刀し、ケイジに振り下ろす。
一撃入れられれば上々のつもりで攻撃したのだが、ケイジは一歩も動かずに素手で刃を受け止めてきた。
「っ……!?」
白刃取りの要領で左右の小太刀を人差し指と中指の股で受け止め、そのままひょいとこちらを投げ飛ばしてくる。
アクセルは空中で体制を立て直し、何とかズザザ……と着地した。
だが背筋の寒気は全く取れず、心臓も嫌な意味でドクンと大きく脈打っている。
――何だあれ……? あんな白刃取り見たことないぞ……?
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