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第1799話

「ならばこちらも、それに応えてやらねばなるまいな」 「っ……!」  次の瞬間、地面を這うように衝撃波が伝わってきて、アクセルは慌ててその場から離れた。  これが兄の言う衝撃波かと思ったが、想像していたのとだいぶ違う。てっきり地面を割るくらいの怪力を発揮してくるのかと思っていたのに、軽く地面を叩いているだけではないか。  ――というか、衝撃波って拳から出すものじゃないのか!? 何で武器からも出せるんだよ……!  武器の柄で地面を叩くこと自体は、割とよくあることだ。  あくまで音を出すためだが、使い方によっては敵を威嚇することもできる。例えば、槍兵の集団がリズムよく地面を叩いて雄叫びを上げるとか。その場合は地響きのような振動が相手に伝わるので、相手の戦意を削ぐことに繋がるのだ。  だがケイジの場合は、薙刀で地面を軽く叩いただけだ。それが衝撃波になるなんて聞いてない。これではほとんど近づけないではないか。 「くっ……!」  再びカーン、と地面を叩かれ、衝撃波がこちらに飛んでくる。  放射線状に放たれる衝撃波は周囲の砂や小石を吹き飛ばし、地面を抉ってスタジアムの壁まで削っていった。こんなの、まともに食らったら大ダメージは避けられない。  一体どこをどうやって攻めればいいのだろう。  ――というかさっきからケイジ様、ほとんど動いてないんだが……!?  何なら、死合い開始時からずっと同じ場所に立っているかもしれない。  アクセルが勝手に四苦八苦しているだけで、ケイジ本人は一切表情を崩していなかった。雄叫びを上げてこちらに猛攻を仕掛けてくることもせず、「待ち」の姿勢を貫いている。  これで少しでも接近してきてくれればカウンターで斬り返すこともできるものを、そんな安直な戦法は許してくれないらしい。  でも何とかするしかない。地面がダメなら、跳んで近寄るしかない。 「ハアアァッ!」  アクセルは衝撃波の合間を縫って跳躍し、ケイジとの距離を詰めた。  そして素早く小太刀を抜き放ち、十字を切るように振り下ろした。

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