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第1800話
「ハッ!」
振り下ろした小太刀は、案の定ケイジに防がれてしまう。
薙刀をぐるりと回され、小太刀を弾かれ、お返しとばかりに勢いよく拳を突き出される。
「っ!?」
身体を捻り、拳の直撃は避けたものの、当たり前のように衝撃波が飛んできてアクセルの脇腹を掠った。服が破け、血が吹き飛んだだけでなく、臓物の裏側まで殴られたような重いダメージがあった。
「うっ……!」
慌てて距離を取り、腹部を押さえて屈みこむ。
内臓を殴られたせいか猛烈な吐き気が込み上げてきて、アクセルは地面に向かって何度かえずいた。溶けた朝食と胃液の酸味が気持ち悪かった。
――嘘だろ……? 掠っただけでこのダメージなのか……?
ちょっと殴られただけで内臓までダメージが届くなんて、聞いたことがない。
狂戦士モードになれば何とかなるかもと思ったけど、これではなっても意味がないじゃないか。何なら痛みを感じない分、狂戦士の方が危険かもしれない(蓄積していくダメージに気付かないから)。
「うむ、いい打ち込みだった。その調子だぞ、弟君」
「……!」
「なお、私の拳は様々な障壁を突き破って内部に直接ダメージを与えるからな。くれぐれも、直撃しないように気を付けることだ」
「っ……!?」
つまり直接腹パンなどされた日には、内臓が破裂するということだ。考えただけでもぞっとする。
――一撃たりとも直撃しちゃいけないってか? どんだけハードル高いんだ……。
これでは兄が「最初から勝ち筋なんてない」と言い放つのもわかる気がする。
自分の攻撃は全然入らないのに、相手の攻撃には当たってはいけない。全ての攻撃を回避しながら相手に致命傷を与えるのは至難の業だし、少なくとも今のアクセルでは不可能だろう。何ならケイジは、自分の実力の半分も出していないと思う。
あの手の戦士に勝てるのは、遠距離攻撃が得意なユーベルか、問答無用で全てを薙ぎ払っていくミューくらいなものだ。
――ホント、トップ層にはまだまだ届かないな……。
そんなことを思いながら、アクセルは再び前を向いた。
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