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第1801話

 ここまで来たら負けても構わない。ただ、このままでは終わりたくない。  どうせ負けるなら、思いっきりぶつかって、自分の実力を全て出してから敗北したい。 「……もう一度、いきます」 「うむ、その意気だ。どこからでもかかってくるがいい」  再びケイジが薙刀の石突きで地面を叩き始める。  案の定衝撃波が飛んできたが、さすがに何度も見せられると避け方もわかってくる。こちらに迫って来る直前でジャンプすればいい。 「タアアァァッ!」  間合いを詰め、再度ケイジに斬りかかる。  正面から斬ったら防がれるだけなので、一度フェイントをかけて横から胴を切断するように薙ぎ払った。  当然そんな小細工はほとんど通用せず、易々と薙刀で受け止められ、ガキンと小太刀を弾き上げられてしまう。  アクセルの手を離れた小太刀はくるくると回転して宙を舞い、こちらの頭上に落ちてきた。 「ハッ!」  アクセルは薙刀やケイジ本人を足場に跳躍し、落ちてくる小太刀を掴んだ。  そしてケイジの真上から、掴んだばかりの小太刀をブン、と振り切った。 「……む?」  何かを察し、ケイジは素早くその場から退いた。  だが頭上から放たれた風の刃は小太刀より一回り大きく、ケイジの二の腕を掠めて地面に突き刺さった。 「……!」  二の腕の布が切れ、わずかに血が滲み始める。  傷ついた腕を見て、ケイジがやや驚いた表情になった。 「ほう、これは……」  アクセルは着地して様子を窺った。  完全に避けきれなかったのは、ただの素振りだと思ったからだろうか。  こちらは狂戦士になっていなかったから、通常モードの素振りで風の刃が飛んでくるとは思わなかったのだろう。ただの初見殺しに近かったが、それでも掠り傷を負わせられたのは大きい。 「なかなかやる。私よりランクの低い戦士で、私に傷をつけたのは弟君が初めてかもしれないぞ」 「は、はあ……そうですか……」  どんだけ強いんだ……と内心で呆れたが、初めて一撃入れられたというのは誇らしかった。  ――玉砕覚悟で無茶をし続ければ、いずれ何かが起こるかもしれない……。なるほど、こういうことか……。

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