それに、今まで一歩も動かなかったケイジを動かせたことも十分な成果である。 　下手したらこのまま負ける覚悟もしていたので、相手の行動を引き出せただけでもかなりの収穫だ。ほとんど当てずっぽうに近かったが、この調子で戦っていけば本当に何かが起こるかもしれない。 「ふむ、これは面白くなりそうだ。どれ、私も少し仕掛けてみようか」 「っ……！？」 　そう言って、ケイジは薙刀を地面にぐさりと突き立てた。 　次の瞬間、ケイジの姿が消えた。 　どこに行ったか目で追おうとしたのだが、不意に背後から凄まじい殺気を感じた。 「っ！」 　ほとんど本能と勘だけで回避行動をとる。頭を下げて背を低くし、急いでその場から離れた。 　途端、後頭部近くを衝撃波が通過していき、遠くの壁にぶち当たった。 　続けざま、腹部や足元にも衝撃波が飛んできて、アクセルは全神経を集中させて避け続けた。 　――ああもう……！　これじゃ反撃するどころじゃない……！ 　ケイジがすぐ近くにいるのはわかっている。 　だけど彼の動きがあまりに早すぎて、目ではじっくり追うことができなかった。追おうと思っても衝撃波が次々襲ってくるせいで、ケイジの姿を確認している余裕がない。彼の攻撃を避けるだけで精一杯だ。 「ふっ！」 　ケイジが片脚を高く上げ、ズシン、と地面を踏み抜いた。まるで四股を踏むような動作だった。 　今度は何だ……と思っていたら、踏み抜いた地面からも衝撃波が現れ、こちらに向かって這い寄って来た。 　――ちょ、嘘だろ……！？　脚からも……！？ 　咄嗟の回避が間に合わず、ほとんど反射的に小太刀を振ってしまう。 　小太刀から飛び出た風の刃は真っ直ぐ衝撃波とぶつかり合い、バシュン、と擦れた音を立ててどちらも消滅した。 「あ……」 　それを見た瞬間、アクセルの脳内に一筋の光が差してきた。 　――そうか……あの衝撃波って消せるんだ……！ 　本能的な防衛反応だったが、ヤケクソで小太刀を振り抜いたことで活路が見えてきた。これでもう回避だけに専念する必要はないのだ。