1803 / 2296

第1803話

「ほう……私の攻撃を打ち消したか」  ケイジが動きを止め、こちらを見やる。 「ふむ、戦いの中で成長していくというのは実に素晴らしい。日頃の鍛錬も重要だが、実践はそれ以上に重要だ」 「は、はあ」 「弟君はまだまだ強くなるだろう。これからもたゆまず努力していくことだな」  腕組みをし、しみじみと言うケイジ。  そう言ってもらえたこと自体は、すごく嬉しかった。仲間内から「修行バカ」と評されているケイジがそこまで言うのだから、自分はまだまだ伸びしろがあるということだ。まだ強くなれるということだ。  ただ……。  ――これ、もう死合いじゃないな……。  少なくとも、実力をぶつけ合って斬り合う場とはかけ離れてしまっている。例えるなら「ケイジの特別訓練」といったところか。  何せケイジは自分の実力をほとんど出していないし、こちらを値踏みしてあれやこれやと意見を述べる余裕を持っている。  一方、アクセルにはそんな余裕などなく、必死にケイジに食い下がっている状況だ。  こちらは本気でぶつかっているのに、相手が本気を出していないのではこちらの空回りで終わってしまう。  それでは悔しすぎるし、死合いとしての意味がない。 「……ケイジ様、ひとつお願いがあります」  アクセルは真っ直ぐケイジを見返して、言った。 「ケイジ様の本気を見せてくれませんか?」 「ほう?」 「今の俺ではケイジ様に勝てません。それは重々承知しています。だから、ケイジ様とどれくらい実力が離れているのか、実際にこの目で確かめたいんです。ケイジ様の強さを、身をもって体験したいんです」 「なるほど」 「内臓ぐちゃぐちゃになっても構いませんので、どうか……お願いします」  誠心誠意頭を下げ、自分の気持ちをぶつけてみる。  するとケイジは顎に手を当て、面白そうに口角を上げた。 「ふむ。弟君がそう言うのなら、それもよかろう。ただ、私が本気を出すとつい手加減を忘れて、相手が肉塊になってしまうことがあるのだ。フレインにも苦情を入れられるだろうし、少し遠慮していた」 「そ、そうなんですか……」

ともだちにシェアしよう!