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第1806話(アクセル~フレイン視点)※

『えー、勝負アリかな? じゃあ優勝はケイジってことで……』  いい加減なアナウンスが聞こえたところで、アクセルの意識はなくなった。  だがどういうわけか、身体は元気に起き上がったような感覚があり、アクセルの意思とは関係なく再び動き始めた。 *** 「え……?」  弟が倒れたのをボックス席で見ていた。ケイジの拳が弟の腹部を貫通したのも見ていた。  ――ああ、あれじゃもう戦えないな……。  そう思ったから、せめて自分で棺に入れてあげようと椅子から腰を浮かしかけた。  だがヴァルキリーのアナウンスが天から降ってきた次の瞬間、再び弟が動き始めたのだ。 「ちょ……どういうこと……?」  むくりと起き上がり、ケイジに斬りかかる。  さすがのケイジもここから攻撃されるとは思っていなかったのか、正面から胸元を斬りつけられてしまった。  赤い飛沫が散り、アクセルの顔面にケイジの返り血がこびりつく。 「おいおい……弟くん、まだ動くつもりかよ」 「……あんな状態で動けるものですかね? ちょっと様子がおかしくないですか?」  ジークとユーベルも怪訝な顔をしている。  フレインも小さく首を横に振った。 「……いや、多分もう意識はないと思う」 「あー、やっぱりそうだよねー? じゃあ何でアクセルまだ動いてるのー?」 「……どうしても勝ちたかったんじゃないかな」  詳しいことはわからない。  ただ弟は、常日頃から「絶対優勝して兄上と戦いたい」と言っていた。その想いに嘘偽りはなく、トーナメントが始まってからもひたすら優勝目指して努力を続けていた。  だから、例え勝てない相手でも「負けたくない」という強い意志が働いたのは納得できる。もしかしたら、透ノ国で新しく魂を吸収したことも関係しているかもしれない。  何にせよ、このままアクセルを放っておくわけにはいかなかった。  フレインは椅子から立ち上がり、身を乗り出してケイジに向かって叫んだ。 「首を落とせ!」

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