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第1807話(フレイン視点)※
ケイジもそれは承知していたようで、手早く薙刀を振るって弟の首を斬り落とした。
愛する弟の首が吹っ飛ぶ様子を見るのはやや悲しかったが、ここに至ってはやむを得ない。これでアクセルも止まるだろう。
ところが。
「……!?」
首がなくなっても、アクセルは動きを止めなかった。
もう前も見えていないだろうに、小太刀を掴んだまま離さず、闇雲に素振りを繰り返している。その姿は、頭が壊れて制御不能になったロボットを彷彿とさせた。見ているこっちが辛かった。
「もういい……もういいよ、アクセル。お前は十分頑張ったから、もう止まりなさい」
必死に呼びかけた次の瞬間、天から光の弓矢が飛んできて弟の身体に直撃した。
脊髄から腰骨までが真っ直ぐに貫通しており、身体だけ串刺しになったみたいに地面に縫い留められていた。
――光の弓矢まで出てくるなんて……。
フレインはチラリと天を見上げた。
光の弓矢は、戦士が死合い中に反則行為等を行った場合に放たれるヴァルキリーの専用技である。以前、ランゴバルトも団体戦の時にこれで止められていた。
素行が悪かったりルールを守らなかったりする戦士が弓矢の餌食になるのはよくあることだけど、真面目な弟がこれを食らう日が来るなんて、俄かには信じられなかった。自分でも思った以上のショックだった。
『はい、これで止まったわよね。じゃ、今度こそ優勝はケイジってことでー。係のヤツは後始末よろしくー』
ふざけたアナウンスが降ってきて、そのまま死合いはお開きとなった。
観客もやや戸惑っていたようで、「何だったんだ今の死合い……」という声がそこかしこで聞こえてきていた。
居ても立ってもいられず、フレインはボックス席からひらりと飛び降り、弟に駆け寄った。
「アクセル……!」
まず頭を回収し、次いで串刺しになっている身体に近づく。
さすがにもう動いていないみたいだが、それでもなお小太刀を握り締めたままだったのは恐れ入った。死んでも離さないとはこのことか。
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