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第1808話(フレイン視点)※
「……アクセル、もういいんだよ。いい子だから武器を置きなさい」
もちろん言葉は返ってこない。
けれど気持ちが届いたのか、スイッチが切れたみたいに脱力してすとん、と手から小太刀がすべり落ちた。これでようやく棺に入れてあげられる……。
頭を脇に抱え、首無しの身体を担ぎ上げようとしていると、
「私も手伝おう。一人で頭と身体を運ぶのはしんどいだろう」
ケイジが手を貸してくれた。どこかから担架を持ってきてくれて、そこに頭と身体を乗せるよう促される。
「……ありがとう。世話をかけてすまないね」
「いや、首を落としたのは私だ。棺までは責任を持って運ばせてもらおう」
「うん……感謝するよ」
フレインは黙々と担架を運び、弟の遺体を棺の中に入れた。首が取れていた上に内臓もぐちゃぐちゃになっていたので、復活にはかなり時間がかかるだろう。明日の朝には間に合わないかもしれない。
血まみれの担架を片付け、オーディンの館を出ようとした時、いつもの友人たちに呼び止められた。
「ようフレイン。手のかかる弟くんのお世話、ご苦労様だったな」
「というかあなた、弟くんの遺体は常に自分で棺に入れてますよね。遺体ですらも他人に触らせたくないんですか?」
ユーベルのツッコみに「余計なお世話だよ」と答える。
単に遺体回収班の仕事がザツだから、自分でやった方がいいや……と思っているだけだ。遺体を運ばれている途中に落とされたり、身体のパーツが破損したらそれだけで復活まで時間がかかってしまうではないか。
やれやれと自分の肩を揉んでいると、ジークとユーベルは重ねて言った。
「そんなことより、弟くんが復活したら早めに検査受けさせた方がいいぞ」
「まったくです。首を落とされても動き続ける戦士なんて、前代未聞ですよ」
「そー? 僕はちょっと羨ましかったなー。死んでも動けるなんて、最強じゃん」
ミューだけは違う感想を持ったみたいだが、この場にいるほとんどが、おおむね同じような危惧を抱いているようだ。
ケイジも腕組みをしながら言った。
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