1809 / 2296

第1809話(フレイン~アクセル視点)

「ふむ……。鶏等は、首を飛ばしても数秒間は脊髄反射で走っていくことがあるがな。弟君のアレは、それとは少し違うようだ」 「だな。内臓貫通して戦闘不能になってたのに、一度倒れてまた起き上がってたし」 「獣化ともまた違うでしょうが……何にせよ、妙な兆候には違いありません。今のうちにハッキリさせておくべきです」 「わかってるよ」  言われるまでもない。  大事な弟が危ない目に遭いそうなら、自分の身を削ってでも助けてあげる。それが兄である自分の役目だ。  ――しかし、原因がわかるまではそれなりに時間がかかりそうだな……。  フレインは周囲を見回し、友人たちにこう言った。 「とりあえず、弟が復活するまでにアレがどういうものなのか調べてみるよ。きみたちも、仕事入ってないなら手伝って。全く無関係ってわけじゃないんだからさ」 「いや、無関係だろ俺たちは」 「そうでもないでしょ。原因がわからない以上、きみたちだっていつあんな風になるかもわからないんだ。もしかしたら既に、死んでからも動く身体になっちゃってるかも」 「……怖気の走るような話はやめてください。ゾンビのようになるのは御免ですよ」 「んー、ゾンビは困るけど、死んでからもある程度意識を保ったまま動けるのはいいなー。そういう風になれるなら、切れた首を相手にぶつけることもできるしさー」  ……ミューの発想は、相変わらずぶっ飛びすぎていて違う意味で恐ろしくなる。 「とりあえず、図書館でざっと調べてみよう。何か手がかりが見つかるかもしれない」  フレインは苦笑しつつ、友人たちを引き連れてヴァルハラの図書館に向かった。 ***  奇妙な夢を見た。ヴァルハラの上空を飛び回っている夢だった。  ――兄上、どこだ……?  市場を通り過ぎ、家の真上まで飛んでいったけれど兄の姿はない。どこかへ出かけてしまったのか、ピピすらいなくなってしまっている。  ――変な夢だな。どうせならもっと楽しい夢を見せてくれればいいのに。  いや、そんなことより早く目覚めたい。起きればきっと兄が迎えに来てくれるはず。早く復活して、兄とどこかに出かけたい……。  アクセルはヴァルハラを飛び回りながら、夢の中で兄を捜した。

ともだちにシェアしよう!